「都市」と「地方」のいいところを融合する
――「別荘」という概念が変わりそうですね。
日本では都市への人口集中と地方の過疎化が急速に進み、地方の経済やインフラをどう維持していくのかという問題が起きています。その点、SANUの事業は都市と地方を繰り返し通う仕組みにより安定的に人流を生むもので、自分たちとしては現在でも社会的課題の解決に貢献しうる、意味のある事業だと思って取り組んでいます。
ちょっとおこがましいですが、今後は国としても、こうした人流を生む仕掛けを新しい社会インフラとして整備すべきだと思います。地方の活性化が重要といっても、現状では若い世代を都市からUターンさせるのは難しい。そこを補完しうるのが、自然の中に2拠点目の生活場所を持つという考え方ではないでしょうか。
僕は、課題を持つもの同士をくっつけて、両方をハッピーにする仕組みをつくるようなビジネスが好きなんです。SANUの事業でいえば、都市には人もお金も集まっているけど自然がなくて皆が窮屈そう、地方は人は少ないけど自然があってのびのびと暮らせる。じゃあこの2つをくっつければ、双方に新しい魅力を生み出せるだろうということですね。
こうした事業は、その土地の魅力や地元の方々との良好な関係があって初めて成立するもの。僕たちもそれらを見出したり築いたりする努力を積み重ねて、より多くの人に地方の魅力を再発見してもらえるようにしていきたいと思っています。
成長と還元を同時に行っていく
――福島さん自身は、どんな経営者を目指しているのですか。
経営者の在り方という点では、理想としているのは松下幸之助さんです。本当に世のため人のためにビジネスをしたいと考えていた方だと思うので。
僕は家族や親戚の中で一番年下だったこともあって、周囲からたくさんの愛情と叱咤激励を受けて育ちました。そのことに対しては、もう本当に感謝しかありません。自分の仕事はその感謝を世の中に還元していくことであり、会社も事業もそうしたもののために存在すべきだと思っています。
スタートアップ界隈でこうしたことを語ると、「青臭いね」とか「儲からなさそうだね」とか色々言われるんですよ(笑)。でも、僕はそう言われれば言われるほど、この事業で稼いでやろうという気持ちになります。
世の中にとって意味のある事業をして、社会的課題にも真摯に向き合いながら、それでもきちんと利益を出して、社員に還元して、成長もする。それを実際に見せてあげましょうという思いで経営に当たっています。
これからの世の中で求められる会社の在り方って何だろうと考えたとき、個人的には無限成長を追い求めるのは違うかなという気がしています。成長と還元をいかにして同時に行っていくか、それを真剣に考える会社が求められるのかなと。
SANUでも、無限成長を目指すのではなくある程度ストイックに、成長と還元の両立を追求していくつもりです。でなければ新事業を立ち上げても成功しないでしょうし、そうしたビジョンを掲げてこそ優秀な人間が集まる組織になっていけるんじゃないかなと思います。