多くの人は待遇にも満足していない

人事評価に納得している人はほとんどいないが、評価だけではなく評価の結果としての待遇についても納得度は低い。

働き方調査の「給与等の待遇には満足している/不満がある」という設問に対してそれぞれYesと回答した人の比率を、職種別・企業種類別・役職別に集計すると以下のようになる。

「人事評価に納得できる/できない」という設問よりも、満足率、不満足率はそれぞれ高くなっており、人事評価よりも給与等の待遇のほうがより個々人の判断が明確になっている。

実績と給与の連動性が高いと思われる営業職は、不満足率が事務職よりも低くなっているが、満足率は事務職とあまり変わらない。

企業種別では、給与水準が高いことが多い外資系企業の満足率が際立って高く、不満足率も低い。

役職別では、役職が上がると満足率が高くなるが、不満足度はあまり下がらない。一方で、役員が多いはずの本部長・事業部長では満足率が低くなっているのは、もっともらっていいはずだ、と本人が思っているのだろう。

社員は「達成できる目標」を設定してしまう

人事評価に納得している人はほとんどおらず、給与等に対する満足度も低いという状況で、人事評価における目標設定は機能するのだろうか。

少し考えればわかるが、どうせちゃんと評価されず、満足するような待遇が得られないとわかっていて、まじめに目標設定に取り組む動機は生まれない。

また、設定した目標に対して達成したかどうかで評価されるのであれば、できるだけ達成できそうな難易度の低い目標にすることが自分の利益になる。さらに、自分では達成できそうだと思っていても、上司に対しては達成が難しい目標だと思わせることが自分の利益につながる。

しかも、全員がそんなよこしまな考えを持たないような聖人だけで構成されている組織はありえない。だれかが抜け駆けしてできるだけ目標を低く抑えようとするなら、目標設定時点で目標の引き下げ競争が始まる。

実は組織側もそんなことは百も承知なわけで、だからこそ目標はノルマとして、上から割り当てられ、現場ではノルマの押し付け合いが目標設定の焦点となる。

そして、市場や顧客、商品等の違いによる難易度調整を公平に行うことは極めて難しいため、目標設定の段階で誰も納得しない目標が決まり、納得していない目標に対して評価されても、その評価結果に納得するわけがない。

結局、多くの場合、人事評価のための目標設定は構造的に機能しないのだ。