目標を達成すると努力が止まってしまう

人事評価では、事前に目標を決め、その目標を達成したかどうかで評価が行われることが基本になっている。

その目標設定は、評価される側から見ればできるだけ低いほうがよいが、それを積み上げても経営としての目標には届かないため、目標をノルマとして上から落とし、そのノルマを現場が押し付けあうことになる。

そうして決まった目標に対して、評価される以上、現場は達成に向けて努力はするが、問題は達成が見えれば、それ以上の努力が止まってしまうことにある。

人事評価は相対評価だから、全員が目標を達成すれば、より高い評価を得るために少しだけ達成率を上乗せすることもあるが、達成している人が少なく、高い評価を得られることがある程度わかれば、それ以上の上乗せをしないことが自分の利益になる。

それは、達成率が高ければ高いほど、そもそもの目標が低すぎたのではないかという疑念を持たれ、それが評価に影響することを避ける意味がある。さらに、達成率が高ければ、次の評価期間における目標の押し付け合いに不利に働く、それだけできたのだから高い目標を持つべきだという圧力にさらされることを避けるという意味もある。

目標を達成するためのステップイメージ
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昔のリクルートに存在した「売上絶対額ランキング」

組織風土も違い、簡単に比較はできないが、昔の(1995年くらいまでの)リクルートでは、週リク(週刊リクルート)と呼ばれる社内報の最後のページに掲載されていた営業成績ランキングに、達成率ランキングと同時に売り上げ絶対額ランキングも掲載されていた。

これは、おそらく目標設定の公平性の担保が難しいことと、達成率が評価の一面でしかないことをよく理解していたことが背景にあったのだろう。

当時のリクルートでは、高い達成率(その多くは若手の売り上げ目標額が比較的小さい場合が多かった)よりも、売り上げの絶対額が大きいほうが(その多くは中堅以上の売り上げ目標が比較的大きい場合が多く、達成率は100%に届いていない場合も多かった)スゴイのだ、という空気があった。

そして、売り上げ絶対額が大きな、プライドの高い営業は、目標設定自体にはあまりこだわりのない人が多かったように思う。