女性だったら、逃げ道があったかもしれない

「もし、自分が女性だったら、結婚という逃げ道があったかもしれないと思うんですよ。というのも、私と弟以外の親族は、全員女性なんですけれども、結婚できているんですね。同じ宗教のトラブルを抱えているし、顔も私と似たりよったりですが」

2021年の出生動向基本調査によれば、結婚相手の顔を「重視する・考慮する」と答えた女性は、過去最高の81.3%。もともと経済力や人柄は高いスコアを出していたが、さらに外見が加わったかたちだ。サライさんは、まさにその外見で劣位にあると感じている。

「家庭環境や顔の要素を挽回したくて、仕事で努力してきたわけです。でも、結婚相談所でデートが続かないんですよね。何度もブロックされていると『こんなに頑張っても、まだ断られるのか。自分はプラマイでいうと、まだマイナスなのか』という、忸怩じくじたる思いがあります」

ルッキズム、宗教2世、ヤングケアラーの三重苦

男性は男性で、女性に外見や人柄だけでなく、経済力を求める傾向が強まっている。すなわち、両方とも結婚相手に「全部取り」を求めているのだ。欠点がなく、バランスのよい人材を探すなら、わかりやすいマイナスを持つ人間は切り捨てられる。サライさんは、まさに家庭環境や容姿でその「足切り」に遭っているのかもしれない。

フェミニズムの用語に「インターセクショナリティ」という言葉がある。女性だから弱者、貧しいから弱者だと、単一の側面で人を切り分けるのではなく、さまざまなハンディが重なることで差別される現実を反映した言葉だ。

たとえばサライさんは、年収だけを見れば強者だ。だが、外見で若い頃からひどい扱いを受けた、ルッキズム起因の弱者である。そして、宗教2世でもあり、ヤングケアラーとして育ったとも言えるだろう。さまざまな事情が重なったとき、人は簡単に弱者となる。だからこそ、「お前は弱者ではない、なぜなら」と、単一の理由で相手を切り捨ててはならないのである。

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