「高身長」のデメリット、「低身長」のメリット
かつてバブル全盛期の頃、女性が結婚相手の条件に求めたのが、「高学歴」「高収入」「高身長」の“3高”だ。最近はお笑い芸人も他人の外見や容姿をいじるようなネタを封印する傾向にある中、「高身長」だけは依然として人気が高いように映る。はたして身長の高低と人生の損得とは関係性があるのか。
筆者は、身長が170cmに少し足りず、若い頃は高身長への憧れを抱いていた。あと10cm。いやあと5cmほどあれば良かったのにと感じていたが、40代になってからは、そういう思いは薄らいだ。単純な話、電車や飛行機の座席、ビジネスホテルのベッドなど、規定のサイズでも小柄なほうが狭さを感じにくく、小柄・低身長なほうが大柄・高身長よりも“コスパ”が良いと感じているからだ。
身長が低い人のほうが、高い人よりも寿命が長いというデータもある。医師で、東京大学大学院医学系研究科の中川恵一特任教授は日本経済新聞の連載コラムで「高身長ほどがんのリスクが高い」と書いており、がんの発症率は身長で明確な差があるようだ。
中川特任教授はそのコラムの中で、英国の中年女性約130万人を9年間追跡した結果では、大腸がん、乳がん、腎臓がん、悪性黒色腫など10種類のがんで、身長が高いほどリスクが高まることが判明したことを紹介している。身長が10cm高くなるごとに、がん全体で16%もリスクが高まっているのだ。
米国、欧州、韓国の男女を対象にした別の大規模調査の分析結果でも、身長が10cm高いとがん発症リスクは10%上がることが示唆されている。
国立がん研究センターが日本人を対象に実施した疫学研究でも同じような結果が出ている。1990年と93年に登録した40~69歳(当時)の男女、約11万人を平均19年間にわたって追跡したところ、男性は身長が168cm以上の群が160cm未満の群よりがん全体の死亡リスクが17%高く、身長5cmが高くなるごとに4%リスクが増加していたのだ。
喫煙などの生活習慣ががん発症に大きな影響を与えるとはいえ(※日本の研究では男性で約24%、女性で約4%はたばこががんの原因だと考えられている)、身長の低めの方には朗報となるデータになるかもしれない。
なお、この国立がん研究センターの調査では、男性の脳血管疾患による死亡については、160cm未満に比べて168cm以上のほうが死亡リスクが低く、呼吸器疾患による死亡も高身長ほど死亡リスクが低いことが示されており、高身長=死亡リスク大というわけではないようだ