要介護の父親の存在が婚活の障壁に

「中学くらいから、自分は顔面弱者だと思っています。もともとぽっちゃりなんですけど、あだ名が『大福』だったんですよ。それがコンプレックスで。明るく流したかったから、イジられても『何が大福だよ!』って笑って言い返していましたけれども、傷ついてはいましたね」

外見の悩みを相談できる相手はいなかった。というのも、サライさんの家族は、全員が何らかの問題を抱えていたからだ。

「弟がいるんですが、双極性障害のI型で。躁状態のときはまったく寝ないでおしゃべりを続けたり、けんかをふっかけてしまったりする。それで学校にも行けていなくて、現在も実家にいます。さらに、父は若年性認知症で、要介護になっています」

家族に要介護の方がいると、婚活では忌避されやすい。女性は「私が介護を担当させられるのではないか」と警戒するからだ。

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「結婚相談所で、いいなと思う女性と何回かデートを重ねても、家族の事情を話すとお断りされてしまいますね。解散してすぐ、LINEをブロックされてしまう。未読のままのメッセージを見て、またダメだった……と、落ち込むのを繰り返しています」

新興宗教を妄信する母にドン引き

サライさんが抱える苦難は、それだけではない。サライさんは宗教2世でもあったのだ。

トイアンナ『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)

「母が入っていた新興宗教は、幼稚園から系列の施設がありました。子どもを幹部にしたければ、系列校へ入れるのが王道です。しかし、私はどうしても馴染めなかったんですね。父は入信していませんでしたし、信仰しても弟は苦しんでいたわけですから。ただ、母は弟のことで病んでしまっていて……。

特に覚えているのは、布教所に一緒に行ったときのこと。母がみんなの前で泣いていたんです。『私が結婚したら、お父さんも信仰してくれると信じていたのに、裏切られた』と。その母を見て、ドン引きしちゃったんですよ。それが、新興宗教のアンチになった決定打でしたね」

学校では体形を揶揄されて傷つき、家庭は宗教と各々の抱える病気で揉めている。安息の地を求めて学問を志すも、大学院で心を病んでしまう。彼が今、無事に働けているのは、強靭なメンタルと努力の賜物としか言いようがない。