老若男女問わず、抜群の好感度

ただでさえ身長194cmという長身、スラリと長い脚、かつ小顔というパリコレモデル顔負けのプロポーションを持つ大谷だ。近年、オフシーズンにメディアの取材を受けた際などに目にするスーツ姿の大谷は、野球選手というよりハリウッドスターのようであり、たとえばHUGO BOSSやポルシェといったファッション性の高いグローバルブランドが大谷とアンバサダー契約を結んでいる理由もそこにあるのだろう。

SNSのように表層的でインスタントなコミュニケーションが量産される現代社会は、良くも悪くもルッキズムに支配された時代と言えるが、大谷はその外見だけでも人に何かを訴える力を持っている。今風に言うと「映える」のだ。

もちろん外見だけでなく、大谷の人柄やキャラクターも重要な要素だろう。メディアが映し出す大谷に対して僕らが抱くイメージは「優しく礼儀正しい好青年」「無邪気で人懐こい」、「でも勝負の時は真剣」「時々お茶目でユーモアもある」といったところだろうか。

死球を与えた相手打者に謝ったり(MLBの投手は基本的に謝らない)、ダッグアウトでゴミを拾ったり(MLBのダッグアウトはゴミだらけ)、チームメイトと冗談を言い合う姿などが日本のメディアでも再三紹介される。

その魅力的な外見とともに、人から嫌われる要素が全くない、というか好感度抜群だ。野球ファンや若い女性だけでなく、小さな子どもからおばあちゃんまで文字通り老若男女の心をつかんでいるのは、そのキャラクターによるところが大きいだろう。大谷が「野球選手である以前にまず、文化的アイコン」であるゆえんだ。

内閣総理大臣杯日本プロスポーツ大賞受賞式典で内閣総理大臣杯を授与する安倍総理(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

「辺境人」が「世界の中心」に認められた

大谷は日本にいる頃からスーパースターではあったが、そのステイタスがさらに一段も二段も高まったのはやはり、アメリカでプレーするようになってからだ。

大谷が日本だけでなく世界で、というかアメリカで認められたという事実は大きい。極東の島国に暮らす「辺境人」である僕ら日本人は、昔から中国や欧米などその時々で「世界の中心」だった場所の文化、習慣を取り入れながら生活してきた。

常に外来の文化や習慣を参照し、それを独自にカスタマイズしてきた僕ら日本人は、自分たち自身でこしらえた価値判断のモノサシに絶対的な自信を持てず、常に「他者の評価」を気にしてしまうというさががある。今日では、とくに欧米という「世界の中心」の評価を。