その意味で民主党政権には同情すべき点があるが、「マニフェストで言っていたことと違う」という批判を政権が受けることそのものは、むしろ歓迎すべき事態である。
かつての選挙では、政党や候補者は数字の裏づけのない「公約」を掲げるのが常だった。有権者も選挙公約が言いっぱなしの口約束であることは承知していたので、選挙後に実行されなくても、さほど強く批判することはなかった。
マニフェストでは政策を掲げる際、実現の根拠となる財源を明示し、達成目標となる数値も入ってくる。それにより政策の実行可能性が高まるとともに、政策目標が達成されたかどうか、事後に検証することが可能になっているのだ。
民主党がこうした形でマニフェストを掲げ、政権を獲得したことで、初めて数字に基づく政策批判が始まった。日本の国政の世界で初めて、PDCA(プラン、ドゥ、チェック、アクション)サイクルが機能するようになったのだ。これは日本の民主主義の大きな進歩といえる。
高速道路の無料化後退、消費税の税率アップなど、約束したができなかったこと、マニフェストにない政策を行ったことについては、真摯に国民に詫びるしかない。
一方、「子ども手当」の創設、公立高校の無償化、農家への戸別所得補償制度など、かなりの部分が実現した政策も少なくない。民主党はそうした検証をしっかり行って、謝るべきは謝り、誇るべきは誇って、次の選挙で国民の審判を受けなくてはならない。