石破氏と安倍氏によるまさかの決選投票
12年9月に民主党の党首選挙と自民党の総裁選挙が行われ、民主党は野田佳彦首相が再選、自民党は安倍晋三元首相が第25代総裁に選出された。
対照的な党首選だった。有力な対抗馬が出ることなく、全く盛り上がらずに終わった民主党に対して、自民党の総裁選は有力候補5人が立候補し、決選投票に持ち込まれる大接戦。野党自民党の総裁選の動向にメディアの注目も集まった。
自民党の総裁選をドラマチックにしたポイントは2つある。一つは石原伸晃前幹事長の出馬による「谷垣降ろし」である。谷垣禎一前総裁がそのまま出ていたら、民主党同様に全く盛り上がらなかった可能性もあった。
もう一つは町村信孝元官房長官の急病、戦線復帰である。あのまま総裁選から撤退していたら、町村票がまとめて石原氏に流れる公算が高かった。ところが町村氏が選挙戦を続けたために、票が分散する結果になった。
大方の予想では長老の支持を取り付けた石原氏が1位で、注目は安倍氏と石破茂氏の2位争いだった。もともと安倍氏と石破氏は犬猿の仲ではないし、考え方も近い。決選投票では2位、3位連合で1位の石原氏を逆転するという「密約」ができていたとも言われている。
ところがフタを開けてみれば、1回目の投票で誰も過半数を獲得できないのは“織り込み済み”だったにしても、第1位が地方票で断トツだった石破氏で、2位が安倍氏、3位が石原氏という予想外の結果。石原氏は国会議員票ではトップだったが、選挙中の相次ぐ失言で自滅した格好だ。
石破氏と安倍氏によるまさかの決選投票は、石原氏をサポートしていた長老および派閥系の票がそっくり安倍氏に流れて、逆転で安倍総裁が誕生した。
今回の総裁選は自民党にとって非常に意味があるものになった。一つはドラマチックな展開で有権者の目を引きつけたことだ。そして谷垣総裁が降りて、長老たちがこぞって推した石原氏が敗れたことで、「長老支配の自民党が変わった」「自浄効果があった」という印象を与えることにも成功した。無派閥の石破氏の健闘ぶりなどは、これまでの自民党では考えられないことだ。
党員・党友の票を集めた石破氏を選挙の顔である幹事長ポストに抜擢し、幹事長代行に菅義偉元総務相を据えた党人事も評判がいい。自民党きっての良識派といわれる菅氏なら、民主党政権に引っ掻き回された財界も納得がいく。これだけの布陣は民主党にはできないし、ましてや「日本維新の会」ではお話にならない。
私自身は自民党に二度と期待するつもりはないし、応援しているわけではない。今回長老支配は失敗したが、彼らが消え去ったわけではない。しかし、この数カ月の国民心理を見ていると、自民党に対する期待感が一気に高まったように思える。
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