半導体原材料メーカーの決算書から総資産回転率の変化を算出
ここで、SUMCOのハイライト情報を見てみましょう。
ROEが8.3%まで低下した2020年12月期の売上高は2913億3300万円で、総資産は5934億4300万円ですから、総資産回転率は、
・2913億3300万円÷5934億4300万円=0.49回
になります。これに対して、ROEが22.3%と最も高かった2018年12月期の売上高は3250億5900万円で、総資産は5882億5000万円ですから、総資産回転率は、
・3250億5900万円÷5882億5000万円=0.55回
と、2020年12月期を大幅に上回っています。
次に「売上高当期純利益率」を計算してみましょう。計算式は、
です。2020年12月期は売上高が2913億3300万円で、当期純利益が255億500万円なので、売上高当期純利益率は、
・255億500万円÷2913億3300万円×100=8.75%
一方の2018年12月期は売上高が3250億5900万円で、当期純利益が585億8000万円ですから、売上高当期純利益率は、
・585億8000万円÷3250億5900万円×100=18.02%
このように、総資産回転率、売上高当期純利益率の変動が、ROEの変動に大きな影響を与えているのがわかります。
見落としがちな「注記」に重要情報がある
〈ポイント2〉販売管理費の内訳を注記事項で把握する
損益計算書にある「販売管理費」は、基本的にひとまとめにして総額表示されます。そのため、販売費、一般管理費にいくら使ったのかという明細まではわかりません。
ただ、有価証券報告書では「注記」の形で、販売管理費の細目が記載されています。
たとえば、利益が前期は赤字だったけれども、今期は黒字転換したとしましょう。その理由が「販売管理費を圧縮したから」というだけでは、正直なところ何を圧縮して黒字転換できたのかが、よくわかりません。たとえ増益になったとしても、一時しのぎの方法で増益になったとすれば、それは長続きしません。
また、一時的に広告宣伝費を半減させて、今期黒字化を果たしたとしても、来期の決算に支障を来す恐れがあります。広告宣伝費を大幅に絞り込んだことで、製品やサービスのプロモーションができず、来期以降の売上が大幅に落ち込むかもしれません。
あるいは研究開発費を大幅に絞り込んだとしたらどうでしょうか。
研究開発費は会社にとって、将来の収益の柱を生み出す元になるものです。その費用を削減したら、会社の競争力が落ちて、ライバル社に大きく水を空けられることになります。
私の場合、損益計算書に記載された販売管理費の金額が大きく変動した場合、この注記事項に目を通すようにしています。
たとえ厳しい決算だったとしても、給料や賞与の金額が増えていたとすれば、「積極的に人を採用して、次の成長につなげようとしているのかもしれない」というように、前向きに捉えることもできます。
ちなみに社員数は、ハイライト情報に5期分の推移が記載されているので、それも参考になるでしょう。