中国政府関係者は“イエレン発言”に反発
米財務長官自ら中国を訪問し懸念を伝えるほど、中国の過剰生産能力は深刻である。ところが、中国政府関係者はイエレン発言に反発したようだ。
中国政府は供給サイドを強化することで、中国企業の世界シェアを高め、世界経済の中での地位向上を目指したいのだろう。3月の全人代以降、政府はEVおよびバッテリーや関連インフラ、半導体、半導体製造装置などの生産能力を強化する方針を示した。
在来分野では、不動産バブル崩壊で余った鉄鋼製品などが、海外向けの輸出に向かっている。2024年1~2月、ベトナムの中国製鋼材流入は前年同期の約3倍に達した。家具や家電などの分野でも、安価な中国製品が海外に向かっている。
中国から海外へ、行ってみれば“デフレの輸出”は加速している。足許の主要先進国経済では、欧州諸国がその負の影響に直面した。北欧などEVシフトが急速に進んだ国を中心に、中国製(米国のテスラも含む)のEVの販売台数が急増した。中国製EVは相応の性能を備え、独仏の自動車メーカーのモデルより安い。
“世界の工場”から一転、制裁関税が発動するか
欧州委員会は、中国の産業補助金政策などが不当な価格競争につながっていると判断し、中国製EVの調査を開始した。欧州委員会は税関登録時点にさかのぼって、制裁関税を課すことも検討しているようだ。
産業補助金による研究開発や生産体制の強化、海外企業からの技術強制移転などにより、中国企業のコスト負担は低い。主要先進国などにとって、中国企業との価格競争から自国の企業・産業を守る必要性は高まった。米国は政権が代わっても、トランプ政権が導入した対中制裁関税を維持した。
戦略物資として重要性が高まる半導体分野でも、米欧は中国の価格競争に懸念を強めた。米国と欧州連合(EU)は、旧世代の半導体供給網に関しても対中規制などを強化する方針だ。米政府がオランダの半導体製造装置メーカーASMLに、中国向けサービス業務を打ち切るよう要請したとの報道もある。