トランプ元大統領は「60%の関税」を検討
今後、米国政府は中国に対して過剰生産能力の削減を求め、国有企業の民営化など構造改革を推進するよう対話を求めるだろう。ただ、すぐに中国が要請を聞き入れ実行に移すとは考えづらい。
今後、米欧を中心に、供給サイドを強化する中国に対する懸念は上昇するだろう。自国の経済、雇用を守るため、欧米諸国が中国企業に対する規制や制裁関税などを発動する必要性は上昇する。
実際に欧米諸国が中国製品の関税を引き上げると、中国も報復関税など対抗措置を繰り出すだろう。展開次第では、中国で海外製品の不買運動が発生するかもしれない。
米国の大統領候補として注目集まるトランプ氏は、再選した場合に中国からの輸入品に一律60%の関税を検討していると報じられた。中国の対抗措置を見越してのことだろう。関税の引き上げに加え、米国が同盟国や友好国に、中国企業との取引を制限、禁止するよう要請を強めることも考えられる。
中国を火種とした貿易戦争リスクが高まっている
世界的な貿易戦争のリスクは高まっている。反グローバル化というべき世界経済の環境変化は加速するかもしれない。1990年代以降、自由貿易の促進などによって国境のハードルは下がった。
国境を越えたヒト・モノ・カネの再配分は加速し、ジャスト・イン・タイムの供給体制の整備も加速した。米国などの企業は最もコストの低いところで生産を行い、高い価格で供給する体制を強化した。それは世界経済の成長と物価の安定に寄与した。
今後、逆の変化が加速する懸念は高い。中国が供給サイドの強化策を実施するに伴い、米国などは中国の安価な製品を自国市場から締め出そうと対策を強化する。世界全体で関税率は上昇し、自由貿易体制は不安定化する。世界全体で経済運営の効率性は低下するだろう。今回のイエレン氏訪中は、中国が貿易戦争の重要なリスク要因になりつつあることを確認する重要な機会となった。