中国の通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)が、欧米の5G通信網から排除される動きが広がっている。トランプ政権は以前から中国に対して制裁関税をかけていたが、今回の排除でも主導的な役割を果たし、米中貿易戦争はエスカレートしつつある。評論家の江崎道朗氏は「日本企業は、この行方をなすすべもなく眺めているだけ。アメリカ企業はこれに備えていた。このままでは日本企業だけが“負け組”になる」と説く――。

※本稿は、江崎道朗『知りたくないではすまされない ニュースの裏側を見抜くためにこれだけは学んでおきたいこと』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

米中貿易戦争で日本企業にもダメージ

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Krasnevsky)

トランプ大統領の登場によって、これまでの国際政治の仕組みは大きく変わろうとしている。必然的にビジネスも、トランプ政権の意向に大きな影響を受けるようになってきている。その代表例が、米中貿易戦争だ。

トランプ政権は、知的財産を盗んだり、ダンピング輸出をしたりしているとの理由から中国に対して制裁関税をかけ、米中貿易戦争を始めたが、その動きはエスカレートしている。代表例が、アメリカの市場から中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の製品を排除しはじめたことだ。しかもトランプ政権はイギリスやドイツ、日本などの同盟国にも、ファーウェイ排除を求めている。

ファーウェイが国際市場から排除されて、「中国企業もたいへんだ」では済まないのが日本だ。なにしろファーウェイは、多くの日本製品を使っている。ファーウェイの業績が悪化すれば、それは日本企業にただちに跳ね返ってくるのだ。

「完全に油断していた」

2018年12月18日付「産経デジタル」はこう指摘する。

「中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を排除する動きが世界に広がり、日本企業に打撃となる可能性が出てきた。華為の製品には、多くの日本の部品メーカーのものが使われており、調達企業数は80社超に上る。調達額は年々増えており、2018年の年間見通しでは前年比36%増の約6800億円に達することが見込まれている。日本企業にとって無関係とはいえない規模だ」

具体的に、どの企業が影響を受けるのか。

「華為は、パナソニック、村田製作所、住友電気工業、京セラ、ジャパンディスプレイ(JDI)の5社から部品・モジュールなどの供給を受けていることに加え、新製品・新技術の共同開発・開発も行っているとされる。このほか、安川電機は『工場向けの産業用ロボットを納入』(広報・IR部)。TDK、ソニーなども納入しているとみられる。17年は日本企業と5000億円規模の取引実績がある」

ここで紹介されている企業の関係者に話を聞いたら、「完全に油断していた」として、こう語ってくれた。

「トランプ政権が米中貿易戦争を仕掛けてきたので、まずいかなぁとは思っていたが、ファーウェイとの取引額は大きいし、いまの経営陣も中国との関係強化で業績をあげてきた人が多い。社内では、『米中貿易戦争が早く終息しますように』と願うばかりで、まさか貿易戦争がファーウェイ排除へとエスカレートするなんて思っていなかった」

要は、トランプ政権による米中貿易戦争の行方をなすすべもなく眺めているだけで、「どうしたらよいのか」と頭を抱えている状況なのだ。