報告書に書かれていた息子の言葉

A子さんは調停で、「夫は不倫をした有責配偶者であり、私は悪くない、離婚はしない」と主張しましたが、夫は、A子さんの息子への精神的虐待を理由に親権を主張して、A子さんと息子がやり取りしていたLINEや、息子がこっそり録っていた録音などの証拠を提出しました。

A子さんは「多少は怒ったかもしれないが、夫の不倫が原因なので私は悪くない。息子の親権者は私がふさわしい」と主張しましたが、裁判官の判断で、息子に対する調査官調査が行われました。

その報告書には、「パパの不倫をママが何年も怒っているのがつらい。不倫の写真を何度も見せられ、『お前もいずれこうなる』と怒鳴られるのが怖かった」という息子の心情が書いてあり、「親権者には父親が望ましい」と結論付けられていました。

A子さんは激怒して、「夫が悪いのに、息子がこんなことを言うはずがない。息子は夫に洗脳されているに違いない。不倫をするような父親が親権者なんておかしい」と言いましたが、調停委員からは、「息子さんの意見が尊重されます」と言われました。

A子さんは、自分が親権者になることは難しいことがわかって、離婚を拒む気持ちが薄れてしまい、財産分与を行って離婚することにしました。

離婚によって、A子さんは自分が子どもを傷つけてしまったことをようやく実感して、せめて少しずつ関係を改善していこうと思うようになりました。

写真=iStock.com/takasuu
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夫婦の問題に巻き込まれた子ども

皆さんはこの事例を見てどう思ったでしょうか。

「不倫をした夫が悪い」と思う方がいれば、「やりすぎたA子さんが悪い」と思う方もいると思います。

ただ一つ言えるのは、不貞は夫婦の問題であって、子どもをこのような形で巻き込み、ネガティブな影響を与えるのはよくないということです。