新たな基準が作られたわけではない

ほかの基準値もあります。2000年の「健康日本21」は「2010年までに、1日当たり平均純アルコールで約60gを越える多量飲酒者を減少させることを目標とする」と言っていますが、2013年に全面改訂された「健康日本21(第二次)」では「1日の平均純アルコール摂取量が男性で40g、女性で20g以上」と大幅に厳しくされました。

さて、今回のガイドラインはいくらを基準にしたか覚えていますか? 健康意識は高まっているのでさらに厳しくなったのでしょうか?

実は、基準は設定されていません。冒頭に紹介した報道では「ビールなら500ml缶あるいは中瓶1本まで」という数字も紹介されたので、筆者もうっかり「また新しい基準値が作られたのだろう」と勘違いしたのですが、よく読むとこの数字は「健康日本21(第二次)」のもので、ガイドラインはそれを「紹介」しているという立場です。同じ基準値を引き継いですらいないのです。

結局どれくらい飲んでいいのかはわからない

さらに奇妙なことに、ガイドラインには基準めいた数字がいくつも出てくるのですが、どれも結論には至らず、結局どれくらい飲んでいいのかは読んでもわからないのです。ガイドラインに出てくる表(図表1)を引用して説明します。

この表には、それぞれの疾病リスクが高まる飲酒量が書かれていますが、その量は疾病ごとにバラバラです。

この表に基づき、あらゆる病気のリスクを最低限にするなら「全面禁酒」ということになります。

それは厳しすぎると思うなら、たとえば女性の場合、脳出血と高血圧のリスクを無視すれば、「11g/日」を採用することもできます。

あるいは「個々人がおのおの防ぎたい病気に対応する許容量を選んでください」と言ってもいいわけです。