更年期障害は男性にもある。どんな症状なのか。医師の池井佑丞さんは「憂うつ、イライラ、不眠といった精神症状が現れやすいのが特徴で、精神科を受診する人が多い傾向にある。発症しやすいのは、40~60代の働き盛りの人だ」という――。
窓から外を見つめる男性の後ろ姿
写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
※写真はイメージです

男性にもある「更年期障害」

少し前までは女性特有の症状と認識されていた「更年期障害」。しかし、近年男性にも更年期障害の症状が見られることが周知されてきました。更年期にはこれまでと違った変化が心身に現われ、人によっては治療が必要な場合もあります。現在更年期障害の症状を疑う方はもちろん、そうでない方も今後の健康づくりを考えるきっかけと捉えてお読みいただければと思います。

まずは更年期の症状について、男女の違いを見てみましょう。

女性の場合、閉経の前後5年くらいの間に現われるため、主に45~55歳ごろの時期を更年期とよびます。閉経に伴い卵巣の機能が少しずつ低下し、卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンが徐々に減っていきます。閉経するとエストロゲンの分泌はなくなり、ほてり・のぼせ・発汗・頭痛・めまい・憂うつ・イライラなどの症状が現れると考えられています。

うつ症状などで精神科や心療内科を受診するケースが多い

一方男性の場合、閉経のようなはっきりとした節目はありませんが、40代後半から徐々に症状が現れる方が多いようです。男性ホルモンが徐々に減少し更年期障害の症状が現れますが、体力の低下や周囲の環境など、他の要因も大きく影響していると考えられます。

症状としては憂うつ・イライラ・不眠といった精神症状が現れやすい傾向があり、他にも疲労感・ほてり・発汗・しびれなどが挙げられます。また、女性にはあまりみられない性機能の低下を伴う場合が多いのも特徴です。40~60代の働き盛りの人に発症しやすく、特に几帳面でまじめな性格の人、責任感が強い人、運動不足の人、ストレスをためやすい人に起こりやすいと言われています。

男性更年期とは、男性ホルモン(テストステロン、アンドロゲン)の低下に伴い体に生じる症状・病態のことをいい、病名としては加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)と呼びます。LOH症候群の場合、女性の更年期障害の代表的な症状である自律神経失調症状(ホットフラッシュや動悸どうき)で悩む例は少なく、精神・心理的要因の強い症状(うつ症状など)として発現することが多い傾向にあります。そのため精神科や心療内科を受診するケースが多々ありますが、泌尿器科あるいは内科が専門となります。