TAROMANの「昭和風」が完成するまで

普通であれば、CM制作会社のプロデューサーから美術さんに小道具を依頼し、撮影スタッフとスタジオを再度予約して……という流れが必要です。

なので、「今からそのカットを足すのはあきらめましょう」となるところなのですが、自分でつくってしまえば大丈夫、というむちゃくちゃなやり口で小ネタを足し続けました。だって、どうにも不安なんですから。

合成用のグリーンバックで撮った素材の場合は、さらに延々と背景をいじり続けます。

『TAROMAN』のときは、人物の撮影後も、古い写真や、会社に置いてあるミニチュアなどを撮影してはPhotoshopで合成し、それらしき昭和風の背景をつくり続けました。

その上、最後は、でき上がった映像をVHSに一度通してわざと画質を劣化させたりもします。せっかく直火でつくった料理をレンジでチンするようなありさまです。

ギリギリまで手を入れた結果、個性になる

正直、僕の場合は手を入れすぎなのかもしれません。ただ、それが結果的に作風にもなっているし、これからもこういうつくり方を続けていくしかないんだろうなと思います。

藤井亮『ネガティブクリエイティブ つまらない人間こそおもしろいを生みだせる』(扶桑社)

そんな感じで、常にギリギリまであれこれいじっては「なんとか間に合った……」と思いながら納品している日々です。作業中はいつも「こんなんじゃスケジュール通りに終わらないよ」と頭を抱えていますが、結果的に間に合っているので、まあ良しとしています。

締め切りがなければ、僕はいつまでも手を動かし続けてしまうでしょう。そういう意味ではデッドラインに感謝もしています。

こうやって少しずつ映像ができていく過程は大変ですが、とても楽しいものなのです。

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