他者との交流で逆に孤独・孤立感が悪化=増幅仮説

続くもう1つの仮説が「増幅仮説」です。この仮説では、孤独を感じている人が人と交流しても、逆効果になるのではないかと考えています。

人との交流が逆効果になるのには、2つの理由があります。1つ目は、孤独・孤立感を抱いている人にとって、他人との交流が「怖いもの」になっている可能性です(*7)

もし孤独・孤立の原因が人間関係の失敗に起因するものである場合、他人との交流はできるだけ避けたいものになるでしょう。また、慢性的な孤独感は、他人との交流を望まなくなるだけでなく、より「一人になりたい」という傾向を強めてしまうこともわかっています(*8)。これらが当てはまる場合、孤独・孤立を感じる人は、人と会わないことを選択し、仮に他人と交流することがあっても負担に感じるだけで、「一人になりたい」という思いを強める恐れがあります。

2つ目の理由は、孤独・孤立感を持っている人ほど、うまく他人とコミュニケーションすることが難しく、結局人との交流を苦痛に感じてしまうというものです。

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人間不信のまま交流してもうまくいかない

実は過去の研究から、孤独を感じている人ほど、皮肉、不信感、拒絶や裏切りというネガティブな考えを持って他人と交流する傾向があるとわかっています(*9)。要は人間不信に陥っている状況であり、このまま人と交流してもうまくいかないでしょう。この結果、他人と交流するのは大変だし、結局一人のほうが楽となってしまうわけです。

また、他人から孤独・孤立に陥っていると認識されると、それがスティグマ(差別・偏見)へとつながり、周囲から否定的に捉えられ、不当な扱いを受けるようになるとも指摘されています(*10)。欧米の研究では、孤独な人は他人から否定的に認識されるだけでなく、社会適応力の低い人だと考えられる傾向があります(*11)。この場合、コミュニケーションを取ったとしても、相手の反応は素っ気ないものとなり、交流するメリットは小さいものとなるでしょう。

このように、孤独・孤立感を抱いている人ほど、他人とのコミュニケーションに障害を抱えている場合があるため、他人とのつながりや交流を持つことがプラスではなく、マイナスにきいてしまう可能性があります。