日本茶で一点突破、「村茶ブランド」を確立

1年後。道の駅四万十とおわの道の駅運営に関する指導を受けることが決定した。予算は4年で約2000万円。

四万十ドラマは、特色ある道の駅を作るために、考え方の土台となるトータルデザインが最重要と説く。森本さんは、村内在住デザイナーの兜岩かぶといわ知也さんに声をかけた。

その後、社員登用を前提とした「地域おこし協力隊」2人が採用され、森本さんは彼らと共に村内を取材し情報収集し、同時に商品開発と情報発信する役割を担った。

最大の課題は「南山城村」と「茶」をどういう形で伝えるのか。

注目したのは、やはりお茶だった。村内には、抹茶の原料「碾茶てんちゃ」を栽培する茶農家が数軒存在する。国内での抹茶スイーツの人気を踏まえ、「村の抹茶をふんだんに使用したスイーツを看板商品にして茶商品を展開してはどうだろうか」。南山城村産のお茶を「村茶」と銘打ち、一点突破。商品ブランディングの軸が決まった。看板商品「むらちゃパウンドケーキ」「村抹茶ソフトクリーム」はそうやって作られた。

写真提供=道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村
看板商品のむらちゃパウンドケーキ。年間7000個が売れる。
写真提供=道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村
陳列したそばから売れていくむらちゃプリン。お茶の濃厚さととろりとした食感が人気。
撮影=野内菜々
年間約50万本販売する、名物村抹茶ソフトクリーム。あざやかな緑色とまろやかな苦味が特長の品種オクミドリの抹茶を贅沢に配合。

一方、煎茶は茶農家それぞれの味などの特色を打ち出した、コーヒーでいう「シングルオリジン」の考え方を取り入れて「単一農園」と明記。ひと目で個性がわかるデザインとネーミングに仕立てた。

道の駅に置く商品コンセプトは、村在住デザイナー兜岩さんの家の蔵で偶然見つかった、村のレコードにヒントがあった。歌詞カードに書かれてあったのは「おらが村での、つちのうぶ」。

「つちのうぶ」は漢字で書くと「土の産」、つまり土から産まれたものといった意味だ。商品コンセプトは、満場一致で「つちのうぶ」に決定した。

茶を中心としてきた人の暮らしがデザインになった。コンセプトやデザンを披露すると、村人から拍手が沸き起こった。

2015年11月。森本さんは、南山城村が100%出資する第3セクターの会社、南山城の代表取締役に就任。2016年3月、31年間働いた南山城村役場を退職し、翌春に道の駅をグランドオープンした。

「道の駅をやると腹をくくってオープンするまでの7年間が、いちばん苦しくしんどい期間でした。ひとりで取り組んできた村づくり。仲間ができたものの、本当にできるのだろうかと不安は大きかったです。それがようやく形になって、安堵しました」