シュンペーターが語った「イノベーションの基本」

「そんな先のことなどわからない」と言う人もいるかもしれませんが、コロナ禍を見てもわかるように、そもそも3年後、5年後の未来すら正しく読むことが不可能な時代です。むしろ、30年、50年先を見据えた大きな流れを見るほうが、未来をより正確に予測できるとすら言えるのです。

最後に、3.の「自前主義病」です。

日本企業はそもそも、何でも自社内だけで解決しようとしすぎです。パーパスを策定するにあたっても、「自前でできること」にどうしても発想が限られてしまいます。そして、その視点で作られたパーパスもまた、夢のないものになってしまいがちなのです。

今、自社にできないことも、その能力を持った他社と組んだり、それができる人を取り込んだりすることで、可能になるはずです。

経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションの基本は「新結合」にあると言いました。私の言葉で言えば「異結合」ですが、企業は異質な外部資産を活用できるかが今後の勝負のカギになります。

パーパスを策定することは、そのための有効なツールとなります。

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提供するモノやサービスの価値こそ重要

前述のアンケートでは「パーパス経営の実践によって、どのような企業価値が生まれると思われますか?」という質問も行いました。これに対して最も回答率が高かったのは「ブランド価値、レピュテーション(評判)向上」であり、次点が「従業員体験価値(EX、ES)向上」でした。

これはまさにその通りで、パーパスが浸透すれば、「顧客」「従業員」双方に対して大きな効果が期待できます。

顧客に支持されるからこそ売上が伸び、従業員の満足につながります。また、従業員がパーパスによって働きがいを得ることで、提供する製品やサービスの価値が上がり、顧客にさらに喜んでもらえます。

実は、この点は極めて重要です。

昨今はコーポレートコミュニケーションという言葉のもと、どのようなメッセージを発信するかにばかり注力する企業が多くあります。それについて否定はしませんが、いくら口でいいことを言ったところで、その会社の提供するモノやサービスの価値が低ければ何もなりません。

製品やサービスを通じてパーパスを伝えること。これこそがパーパス経営の一丁目一番地であるということを、再度認識しておいてほしいと思います。