子どもが伸びる環境の条件がわかった
――これまでの教育は、ほとんどペーパーテストだけで子どもたちの能力を測っていましたけど、それ以外のことがわかるようになれば教育のあり方が変わりそうですね。
【岩本】そうですね。僕らとしてはペーパーテストに表れない一人ひとりの成長を「見える化」したかったんです。主体性とか協働性、社会性というのは目に見えにくいと同時に、人と比べにくいものでもありますよね。だから、どっちの主体性が高いかを競争するわけではなくて、その子のなかでどう変わったのか、その子がどれぐらい成長したかを評価しています。
そこからどういう条件で伸びるのかを調べてみると、「学びの土壌」が大事だとわかったんです。とくに大事なのが、高校生をとりまく環境、文化、雰囲気に、安心安全の土壌があるかどうか。
チャレンジして失敗したとき、応援されるのかバカにされるのかによって、心理的ハードルがぜんぜん違うじゃないですか。安心して挑戦できる環境、心理的安全性が保たれていること。お互いに問う、問われる対話的土壌があること。多様性が受け入れられる土壌があること。何かやってみたいと思ったときに、地域・社会に橋渡ししてくれる大人がいること。そういう土壌が豊かな地域ほど、主体性や協働性などの非認知能力が伸びるんです。
運動をすると筋肉がつくのといっしょで、行動するほど主体性は伸びます。安心して行動できる土壌を作ってあげるのが、非認知能力の育成のポイントだということがあらためてわかりました。
地域みらい留学こそ最先端の教育だ
――それは具体的な数字にも表れているんですか。
【岩本】一部を公表していますが、その都道府県以外から来ている生徒の割合が30%以上になると、主体性や社会性の伸びが大きいということがわかっています。やっぱり同質性が高い集団より、多様性のある集団、環境のほうが伸びるんですよね。
その点、地域みらい留学をやっているところは、全国から生徒が集まっていて、開かれた土壌があって、多様な人たちとつながりやすい。必然的に子どもたちの非認知能力が伸びやすいんです。
僕はこうした環境を用意できる地域みらい留学は、都市部の学校に負けない、最先端の教育であると自負しています。日本の公教育の中に「地域みらい留学」という選択肢がある。そのことを多くの人に知ってほしいと思っています。