ゴミ捨て場の近くでは「ワンワンワン」

40の音のうち、すべてで統計的有意差が出たわけではないが、少なくとも10種類以上は異なる音と判別することができた。それらは、次のようなシチュエーションで発せられる声だ。

・ピンセットでつまむ 「キキキキキキキ」
・オーツ麦(菌のエサ)で埋める 「キキキキキキキキキ」
・マメ科の葉っぱを切る 「ドゥルドゥルドゥルドゥル」
・オトギリソウ科の葉っぱを切る 「キュキュキュキョキョキュ」
・オウムバナ科の花を切る 「トルルルルルルル」
・キノコ畑の上での警戒音 「トトトトトトトト」
・ゴミ捨て場の近くで特異的な音 「ワンワンワン」
・巣穴の入り口付近での警戒音 「ギュギョギュ」
・トレイルで鳴る警戒音 「ギュッギュッギュッ」
・幼虫の世話 「ギュンギュン」
・女王アリの警報 「ザ! ザ! ザ!」

ピンセットでつままれたり、穴に埋まったりした時には「キキキキキキ」とテンポのいい音を発する。「やめろ、やめろ」「助けて、助けて」といったシグナルを発し、仲間に危険を伝達するとともに、自分の身の安全確保という意味合いもあると考えている。

写真=iStock.com/Boogich
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葉っぱが変わると働きアリの音も変わる

室内実験から、ハキリアリが好む植物とそこまでではない植物を明らかにしていたので、それを実験的に与えた時にどういう音を出すかも調べてみた。

村上貴弘『働かないアリ 過労死するアリ ヒト社会が幸せになるヒント』(扶桑社新書)

柔らかなマメ科の植物を切っている時は、「ドゥルドゥルドゥルドゥル」と、とてもリズミカルな音を出していて、「この葉っぱはいいぞ! みんな集まれ‼」という働きアリの訴えかけがよく伝わってくる。

オウムバナ科の花はそこそこ好きな植物なので、「トルルルルルルル」と、やや軽めの音を出す。「まあ、よければ集まってください」という感じだ。

そして葉が硬く、あまり好みではないオトギリソウ科の葉を切っている時は「キュキュキュキョキョキュ」という音を出す。「うーん、この葉は硬くてイマイチだな」といった情報を伝えているものと推測している。