物言う障害者はクレーマーなのか
筆者は生前の木島さんとは面識があった。筆者が知る限り、木島さんはクレーマーなどではなかった。障害を持つ人たちが生活しやすい環境をつくるために、主張すべきところは主張するという「物言う障害者」であったというのが事実だ。
木島さんは、本事件が起きる前に「障害者が自力でできるのに、サポート体制が整っていないという理由でサービスが受けられないことがあるが、これはおかしい」と言っていた。
バニラ・エアの件にしても、木島さんは自力で搭乗できたにもかかわらず、「自分で歩けない人は搭乗できない」として頭ごなしに拒否されたことを疑問視し、あのような行動を取ったと考えられる(木島さんのブログでもそのように書いている)。
筆者が把握している限りでは、このことについて正しく論じていたのは、作家の乙武洋匡さんと元客室乗務員で健康社会学者の河合薫さんくらいで、大半の批判や議論は、木島さんの行動の背景にある意図が踏まえられていない、論点がずれたものだったように思える。
大切なのは障害者への理解を深めること
障害を持つ人たちをひとくくりにして扱うことはできないし、「(彼らの)要求はすべて受け入れるべきだ」ということもない。しかしながら、障害者の人たちが、どこで不便や不具合を感じているのか? それに対して、どのような対応や支援を行うのが適切なのか? といったことは非常に見えづらく、それを理解しようと努めることは重要なことだ。
なお、筆者が所属する大学の車いすユーザーの学生に、今回の件についてどう思うか聞いてみたところ、「いまの状況では、映画館の対応はやむを得ないと思う。一方で、これまでは対応してくれたのに……という(利用者側の)気持ちも理解できる。ルールを明確にしておいていただければ、(車いすユーザーとしても)利用しやすい」とのことだった。