設備や制度以上にコミュニケーションが重要
今回の件についても、よく事情を知らない第三者が、短絡的に「どちらが悪い」といった批判を行うことは好ましくないが、ひとつ言えることは、設備の充実や制度設計だけでなく、コミュニケーションが重要になるということだ。すべての設備をバリアフリーにしたり、いつでも対応できる人員をそろえたりするには、多大な負担が強いられてしまう。
バニラ・エアの事例では、搭乗者が事前に連絡しなかったことが批判の種となった。たしかに、事前に連絡が入っていれば、航空会社側も対応策を講じる余裕はできたかもしれない。一方で、事前に連絡していれば、その時点で搭乗拒否をされてしまっていた可能性もあった。
バニラ・エアの件にしても、今回のイオンシネマの件にしても、企業側が「原則として受け入れる」という態度を示して、利用者側が事前に連絡して対応策を講じてもらうということで解決できたはずだ。
2024年4月に「障害者差別解消法」が改正され、これまで努力義務とされていた障害者への合理的配慮が義務化される。こうした制度の変化を見越して、このような件については、ただ批判をするのではなく、問題の本質がどこにあって、どのような支援のあり方や制度づくりが望ましいのかを考えるきっかけとすべきであると思う。