フリーになるのは「目立ちたい」「カネのため」なのか
このように、女性アナの流出事例には枚挙に暇がない。なぜ彼女たちは、テレビ局の「顔」や「看板」という華やかで安泰な地位を捨てて、フリーという荒野へと足を踏み出すのか。
女性アナにもさまざまなタイプがいる。なかには視聴者の指摘通り、考えも甘く、「目立ちたい」という自分よがりなアナウンサーもいる。しかし、そんなアナウンサーはひと握りである。若いうちには、「浅はか」ともとれる思いつきで気軽に退職する者もいる。だが、私が今回検証したいのは、そういった類いの女性アナの流出現象ではない。“名実共にある”女性アナの活路を塞ぐテレビ局の内部構造について問題提起をすることにある。
前回の制作現場のクリエイターたちの事例から推測すれば、そこには“精神的な”メリットという前向きな理由がありそうだ。
だが、現実はそんなに甘いものではない。テレビ局という「閉鎖された世界」で繰り広げられているアナウンサーを取り巻く人間模様は、視聴者が思っている以上にドロドロした壮絶なものなのだ。
テレ東を去った3人の女性アナから見えてくるもの
今年になって退職が報道されたテレ東アナ、福田氏、須黒氏、松丸氏3人の共通点は、以下の4つだ。
・30~40代という年齢であること
・結婚をして出産をしたこと
・フリーアナウンサーへの道を選んでいること
福田氏は現在33歳、2013年にRKB毎日放送に入社、2016年にテレ東に移籍した。須黒氏は39歳、2007年テレ東入社。松丸氏は42歳、2004年入社である。
クリエイターと同じく、30~40代というともっとも円熟期と言われるベテランになり、これから仕事がますますおもしろくなってくるはずの年齢である。そんなタイミングで退社しなければならない理由とは、いったい何なのか。
以下は、女性アナが視聴者から受けることの多い5つの批判である。
② ちやほやされて、タレント気取り
③ 派手好き、交友関係が派手
④ プロ野球選手や経営者との結婚で、「玉の輿」を狙っている
⑤ フリーになりたがり、「カネ」に欲深い
こうした点だけが独り歩きすることで、女性アナたちの離職は、常に表層的かつ単に“スキャンダラスな”週刊誌などのネタとして消費されるだけになっている。そのため、本当に検証されるべき構造的な欠陥が看過されてしまっているのだ。
「テレビの広告塔」だからこその苦悩
まず、①の「タレントやミスコン出身者が多い」という批判だが、アナウンサーはタレントと違って、テレビ局の「正社員」として採用されることに着目してほしい。いわゆる会社員という「サラリーマン」なのである。