なぜ政治家の発言は「心がこもっていない」ように聞こえるのか

少し話が飛躍しますが、記者会見で質問に答える政治家が、役人が書いた文章を読んで答えている時のことを思い出してみてください。いちおう「私はこう考えている」という内容を喋っているのですが、あの「心がこもっていない感じ」といったら!

あの場合は、他人が書いたものを読まされているとあえてアピールする(つまり、俺は悪くないと態度で示したい)ために、ああなっているのでしょう。一方、用意された原稿のない内輪の会合などでは本音で喋って、うっかり誰かを傷つける失言をしてしまう。こっちの方が人間性が出るということがよくわかります。

「自分の気持ちを、誤解されないように、自分の言葉で喋る」という点で、政治家はラジオ番組でのアイドルに学んだ方がいいのかもしれません。飛躍しすぎました。番組のトークに戻ると、これは他人が書いた進行台本に限りません。自分で喋るために、自分でメモを作っておく場合も同様です。

オードリー春日のメモを捨てたワケ

「オードリーのオールナイトニッポン」の最初の頃、私は春日さんとも事前にトークの相談をしていました。アレコレ話をして「だいたいその方向でいきましょう」となると、春日さんは喋る内容を簡単にメモします。それはいいのです。

藤井青銅『トークの教室 「面白いトーク」はどのように生まれるのか』(河出新書)

段取りを書いておくのは頭の整理に必要なことだし、間違いやすい固有名詞やつい忘れがちなことは、メモをして見える所に置いておいた方がいい。が、問題は書き方で、あまりちゃんと書いてしまうと、メモにある言葉を順に読んでいくトークになってしまう。

いつも、(内容はいいんだけど、どうも生き生きしたトークにならないなあ)と思っていた私は、ある時トークの直前に春日さんの手元にあるメモを取り上げ、捨ててみたことがあります。春日さんは慌てました。でも生放送。喋らなければなりません。春日さんはアワアワして、メモを思い出しながら、話は前後に飛びつつも、生き生きとした面白いトークになりました。

目の前の若林さんも面白がっていました。もちろんそれは、春日さんのあのキャラクターがあってのこと。ラジオの深夜放送だからできたことでもあります。そして、一回だけのことです。自分でメモを作る場合は、あえてキチンとした文章にしないことを心掛けた方がいいでしょう。

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