資産価値1億の自宅…リースバックか、リバースモーゲージか

川越さん「実は、自分でも少し調べてみたんですが、リースバックという方法を使えば、自宅に住み続けることができると知りました。私がリースバックを利用するのは、どうでしょう?」

畠中「リースバックを利用すれば、家の売却代金が手に入って、資産は一時的に増やせます。ただ売却後は家賃を払い続けることになりますので、その分、月々の生活費が膨らみ、年間の赤字額もかなり増えます。川越さんにとって、家に住み続けることの優先順位が高いのであれば、リバースモーゲージという方法もありますよ」

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川越さん「リバースモーゲージのほうなら、家賃を払わなくていいんですか?」

畠中「リバースモーゲージは、主に土地を担保にしてお金を借りる方法です。金融機関によっては、マンションも担保にしてくれるところもあり、だいたい担保価値の50〜60%までの借入ができます。リバースモーゲージを利用すると、借りたお金から利息が発生します。ただ川越さんの場合、現時点では無収入なので、無収入の場合、申し込み資格を満たさない金融機関もあります」

川越さん「リバースモーゲージは無収入だと申し込めないんですか?」

畠中「土地を担保にするので、元金の返済は亡くなった時になりますが、利息部分はご存命中に支払うため、利息を支払えるだけの収入が必要になるんです。ただ、金融機関によって、申込める条件は異なりますので、土地の評価が高ければ、収入条件を緩くしてくれるところはありますね」

川越さん「リースバックには収入条件はなかったですよね」

畠中「リースバックは自宅を売却するわけですから、収入条件は必要ないと思います。ただ川越さんの場合、周辺の家賃相場を考えますと、リバースモーゲージから発生する利息のほうが、リースバックで家賃を払い続けるよりも負担は抑えられるはずです。またリバースモーゲージの場合、リースバックとは違って、自宅は自分名義のままなので、修繕なども自分の意思で自由におこなえます。年金が受け取れるようになるまでは、手持ちの貯蓄で生活費を賄えるはずですので、年金収入を受け取るようになってから、リバースモーゲージを利用する方法もありますね」

川越さん「僕には兄弟姉妹もいないですし、親戚とは疎遠なので、家を遺してあげるべき人は1人もいません。僕は若い時から本が好きで、自宅の一部屋には天井まで本が積み上げられている状態なので、引っ越しするのも大変です。そういう意味では、今回うかがったリバースモーゲージのほうが、僕に向いているような気がします」

畠中「将来、川越さんが亡くなった後に、自宅の片付けなどを第三者に任せたい場合、身元保証会社と『死後事務』を含めた死後の整理契約を結ぶことを検討するとよいでしょう。残余財産が発生した場合、自分があげたい人やお世話になったNPO法人などに、財産を遺贈したいと頼むこともできます。リバースモーゲージを利用して借りる金額を決める際は、川越さんの生活費だけでなく、身元保証会社に依頼する分の料金も含めて考えてはいかがでしょうか」

後日、川越さんから連絡があった。ある銀行に行って、リバースモーゲージの説明を受けたそうである。ただし無収入の現時点では、申し込みを受理できないと言われたそうだ。先述の通り、リバースモーゲージは利息分を支払える能力が求められるので、無収入状態では無理なケースもある。これから川越さんは、ひと月に1行くらいのペースになりそうだが、いくつかの金融機関に借り入れの条件などを聞きに行くという。

川越さんの自宅は、リバースモーゲージの担保にするのに十分な価値のある家である。収入面でのハードルがあるとしても、年金をもらえるようになる近い将来、リバースモーゲージを利用することで、川越さんは住み慣れた家を離れることなく、生活費の確保と身元保証会社に支払う費用を確保できそうである。

ただ、川越さんには、もう1点問題がある。