録音でわかった「怒鳴る妻と泣きじゃくる息子」
妻は普段は何食わぬ顔で長男と接しています。
A夫さんが長男の勉強のことを聞くと、「ちゃんと頑張ってるわよ」としか答えません。
自分の前では怒らないようなので、A夫さんは自分が不在の日に家に録音機を仕掛けてみることにしました。
すると録音されていたのは、ヒステリックに怒鳴る妻の声と大きな物音、それに「ごめんなさい」と泣きじゃくる長男の声でした。
長男から話を聞いていたとはいえ、普段の妻の態度からは想像できない怒鳴り声を聞いて、A夫さんは大きなショックを受けました。これはもはや虐待だと思ったA夫さんは、妻に「長男の塾をやめさせよう」と提案しました。
すると妻の表情が一気に変わりました。「せっかく入ったのにやめるなんてみっともない。周りから逃げたって笑われるじゃない」とまくし立てて、全く聞き入れようとしません。
結局、その日は妻を説得することはできませんでした。
夫は息子を連れて別居
その後も長男の成績は上がらず、目に見えて元気がなくなっていき、「お腹が痛い」と言って、学校にも行きたがらない日が増えてきました。妻はA夫さんの前でも息子を怒るようになり、テストの結果が出るたびに、「○○くんは(塾の)上のクラスなのに」「こんな成績じゃ上位の○○中に行けない」と怒鳴りつけ、A夫さんがかばおうとすると「パパに似たのね」などと当て付けを言います。
妻が口にするのは最上位レベルの学校の名前ばかりで、長男の成績からするととても合格しそうにはありませんし、そもそも妻は、最初は具体的な志望校などなく、勉強する習慣は将来も役に立つから、私立中学に行かせようと言っていました。
A夫さんが受験の方針を話し合おうとしても「あなたには中学受験のことなんてわからない」と断られます。その間も長男への叱責は収まりません。
このままでは取り返しのつかないことになる、長男の心が壊れてしまう……。そう思ったA夫さんは、長男と話し合って、自分の実家に2人で帰りました。
そして私の事務所に相談にいらっしゃったのです。
働き方を変え離婚に向け準備
A夫さんの当初の希望は離婚すること、そして親権を得ることでした。
親権を得るには、1人で子育てができる環境を整える必要があります。
今は実家にいて両親が手伝ってくれていますが、それは一時的なものなので、1人で子育てするには、働き方の見直しが必要だと伝えました。
するとA夫さんは離婚に向けて、長男のために、仕事の仕方を根本から変えました。会社経営のかたわら、なんとか時間をつくり、食事を作ってできるだけ長男と一緒に食卓を囲むようにしました。そのうち、息子の体調も回復してきて、A夫さんはほっとしていました。