「中学受験“沼”にハマっただけなのではないか」

しかし私は、妻についての話を聞いていると、もともとの妻の性格の問題というよりも、中学受験をする親特有の“沼”にはまってしまっているだけなので、改善の余地はあるのではないかと思いました。

そこで、離婚に向けた相談には乗りながらも、生活が落ち着いたところで、A夫さんに「夫婦関係をどうしたいか」について考えてもらいました。

このころA夫さんも、私と同様、離婚で解決しようとすることに疑問を感じ始めていました。「塾通いを強制して怒鳴るのがよくないだけなので、それさえ直してもらえば、また一緒に暮らしたい」と言うのです。

そこで、しばらく別居を続けた後、改めて、A夫さんの代理人として、妻と協議をすることにしました。

「とても後悔して反省している」

妻は話し合いのために事務所までやってきました。

夫が長男を連れて家を出てしまったことで、妻は落ち込んでいました。そして少しずつ気持ちを話してくれました。

ただ元気に育ってくれればよかったのに、塾に入ったことで欲が出てしまい、最後は塾のクラス分けの結果だけが気になってしまっていたこと。

学校や塾のママ友たちの手前もあり、成績が下がると自分が否定されたような気がして、つい長男をひどく叱ってしまったこと。

「とても後悔して反省している」と話して、妻は帰っていきました。

妻の話をA夫さんに伝えると、A夫さんは、長男の意見も聞いたうえで、今の塾をやめること、妻には勉強を応援してほしいけれど、関与はしないことに同意してもらえれば、家に帰ってもいいと言いました。妻はこれに同意したので、A夫さんと長男は家に帰りました。

A夫さんのサポートの下、長男は自分のレベルに合った塾に通い始めました。志望校は、妻が当初言っていたランクよりも下げたものの、モチベーションが上がったのか、熱心に勉強しています。妻も前のようにうるさく言うことはなくなり、長男はこつこつと勉強を続けた結果、志望校に合格することができました。