■「中国人はおせちを売れない」の嘘

40代前半で初めて管理職になり、部下を持つ人もいるでしょう。「ただでさえ忙しいのに、部下の育成にもコミットしなければならないのか」という嘆き節が聞こえてきそうですが、悲観的に考えず「今まではすべて独力でやらなければならなかったが、それをやってくれる部下を会社が与えてくれたのだ」と発想を転換してはどうでしょう。

どうすれば部下をうまく働かせられるか。極端な言い方をすれば、一種のゲームだと思って取り組んではどうでしょうか。この人は褒めて育つタイプだと思えば、多少大げさに褒めればよいし、この人は仕事の途中で口を挟むとやる気をなくすタイプだと判断したら、「あとは任せた」と成果報告を楽しみに待てばいい。それぞれの部下の特性をよく考え、本人が一番やる気を出してくれる方法で仕事を任せるのです。

ローソンの新浪剛史社長に伺った話ですが、2009年の暮れ、ローソン全店の中でおせち料理を最も多く販売したのが、大阪市内の店舗に勤務していた中国人の女性社員だったそうです。同社は最近、日本の大学に留学してきた外国人学生を積極的に採用していますが、彼女もその中の1人でした。

売れた理由は、とにかく「売ろう」という一生懸命な姿勢が外に表れていたからだそうで、その健気さに打たれたお年寄りのお客様がたくさん購入してくれたとのこと。「中国人でもこれだけ売れるなら、私たち日本人も頑張らないと」と、相乗効果も生まれたそうです。「中国人がおせちを売れるはずない」という「心の国境」、つまり固定観念を捨ててみれば、あなたの部下にも思ってもみなかった力が隠れているかもしれません。

※すべて雑誌掲載当時

ローランド・ベルガー パートナー 平井孝志(ひらい・たかし)
東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。MITスローンスクールにてMBA取得。ベイン・アンド・カンパニー、デル、スターバックス等を経て現職。近著は『売れる「じぶん」を作る』。

G&S グローバルアドバイザーズ社長 橘・フクシマ・咲江(たちばな・ふくしま・さきえ)
清泉女子大学卒業後、国際基督教大学大学院修了。ハーバード大学大学院教育学修士。スタンフォード大学大学院経営学修士。ベイン・アンド・カンパニー等を経て、日本コーン・フェリー・インターナショナルに入社。2010年8月より現職。
(荻野進介=構成 向井 渉=撮影)
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