今後、大きく変貌する世界の人口分布

こうした人口分布の変化を世界各国の人口ランキングの推移として図示してみよう。

図表3には主要国の毎年の人口ランキング推移を1950年から2100年まで示した。2022年以降は国連の将来推計(中位推計)の結果によっている。ただし、2021年以降の日本だけは図表1~2と同じ国立社会保障・人口問題研究所の公式推計結果によって順位づけしている。

図表3で、まず、目立っているのは5位から40位へと落ちていく日本の順位の傾向的低落である。ちなみに2020年の人口ランキング40位の国は北アフリカのモロッコである。なお、将来の出生率の設定値の差から人口減が小さい国連推計の将来人口であるとやや上位の36位への順位低下となる。

日本だけでなくドイツについても同様に大きく順位を落としていく。現在の欧米先進国の多くも同じだと考えられる。日本の将来人口はドイツ以上に減りが激しいと見込まれているので、GDPだけでなく、人口も2091年にはドイツに抜かれると予測される。

日本とよく似ているのは日本以上に出生率の低下が深刻な韓国の順位変化である。1970年代後半には世界22位にまで上昇した韓国のランキングは、どんどん低下し2100年には69位にまで落ちると予測されている。ちなみに2020年の人口ランキング69位の国は中米のグアテマラである。中国も日本、韓国と同様に出生率の低下が著しいため人口は2100年までに半減するがもとの人口規模が巨大なため、たまたま同じ2位を保っている。

先進国の中で米国だけは2050年頃まではインド、中国に次ぐ世界第3位を維持すると予測されている。それでもそれ以降はナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国に抜かれていき、2100年には6位となっている。

国土面積が世界最大で地政学的な大国であるロシアはソ連崩壊以後人口減が続き、プーチン政権下の経済復調でやっと人口がやや回復したが、2010年代後半からは再度、自然減の勢いが増し人口危機の状況にある。プーチン大統領はかつて「一番の心配事は何か」と記者に問われ、迷わず「人口問題」と答え、ロシア語の教科書には「我々の未来は中国人移民にかかっている」という専門家の主張が引用されていたという(東京新聞2023.2.18、師岡カリーマ「本音のコラム」)。

ロシアの人口ランキングは、1950年から2020年にかけて4位から9位へと低下したが、今後も低落を続け2100年には20位まで低落すると予測されている。

メキシコのような中進国についてはこれまで人口ランキングを上昇させ、2020年には日本を追い抜いたわけであるが、今後は、むしろ順位を低下させていくという予測である。2100年には1950年より順位の低い18位となると予測されている。

先進国や中進国に代わって人口比を拡大させていくのはアフリカ諸国であり、図ではナイジェリアやエチオピアの順位の上昇にそれが表れている。

こうした人口分布の変化が生じたのちの世界政治はいったいどうなっているのだろうか、想像するのも難しい。