ヒカキンを始めとするYouTuberの方が危機管理もうまい

それもいわゆる「ご不快な思いをさせたならおわびします」系のエモーショナルな謝罪ではなく、正装をして、即座に、自分で何が過ちだったと考えているのかを言語化して謝る。これこそスキャンダルが報じられても大炎上にまでは至らないヒカキンの強みの源泉だろうとわたしは見ている。

このクリーンさこそ、いまのテレビ局に欠けているものの一つではないか。「セクシー田中さん」事件でも即日、ひとごとのようなコメントを出し、世間の風化を待つ。逃げきれないとみると追加で謝罪文を出す。人命に関わる事態を招いているのに、遅きに失した対応だ。

松本人志の性加害疑惑が報じられた当初も、「ダウンタウンDX」を制作する読売テレビの大橋善光社長は「松本さんと被害に遭われたといわれる女性の方が対決していただけるというのであれば、今すぐにでも私は放送したらいいと思う」とコメントしていた(1月17日)。正真正銘のセカンドレイプ発言だが、ご本人にはその意識がないのだろう。

なんちゃってグローバルのVIVANT」は海外に通用せず

テレビ局が「他媒体」として意識している有料配信チャンネルの代表格といえば、ネットフリックスだろう。有料会員数は全世界で2億6000万人を誇る。そのアジア・太平洋部門のトップが、世界的ヒット「イカゲーム」や「愛の不時着」などを手がけたキム・ミニョンだ。

彼女は意外にも最初からグローバルヒットを狙うことはしないのだという。「架空のグローバル顧客」向けビジネスはしないというのが信念であり、ローカル戦略を重視。ネットフリックス・ジャパンのテコ入れも、英語ではなく日本語での会話で行った。

※Business Insider「ヒット連発、Netflixアジアの制作トップは韓国人女性。成功の理由は『世界を目指さない』こと
※日経クロストレンド「イカゲーム手がけたNetflixアジア責任者 『日本は想像力の楽園』

一方で、昨年話題となった日曜劇場「VIVANT」(TBS系)は海外市場で大失敗したと報じられた。主演は堺雅人、他に阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、役所広司、二宮和也と錚々そうそうたるキャストを迎え、国内での評判は上々。

しかし2023年12月から190以上の国・地域に向けて世界配信を開始するも、鳴かず飛ばずに終わる。海外進出も見越しての「1話あたり制作費が1億円」ともいわれる大型予算ドラマだったが、回収は厳しそうだ。続編の制作は未定だという。

「ハリウッドとかの巨大スケール作品ってこんな感じでしょ」という詰めの甘い世界観、異国の地の描写は曖昧で、当局としのぎを削るような場面もなく、主人公に「日本の公安は世界一、公正」といわせてしまう。上述したネットフリックス・アジア部門のグローカル戦略とは真逆のスタイルだった。

撮影=プレジデントオンライン編集部
TBS本社