「セクシー田中さん」を制作した日テレは「詳細な契約書なし」

また、原作者である漫画家・芦原妃名子さんの死という不幸な結末をもたらしたドラマ「セクシー田中さん」の余波も大きい。日本テレビの福田博之専務は、2024年2月26日、「できあがった作品の二次利用などについては契約を結ぶが、ドラマ制作の詳細について契約書は存在しない」と明らかにした。

では、芦原さんが死の直前にSNSにつづっていた、映像化の条件だったという「ドラマ化するなら『必ず漫画に忠実に』。漫画に忠実でない場合はしっかりと加筆修正をさせていただく」は単なる口約束だったのか?

※朝日新聞デジタル「『セクシー田中さん』原作改変巡る契約書を交わさず 日テレと小学館
※ビジネスジャーナル「小学館、過去にもドラマ原作改変で問題『漫画家に許諾を取る、が守られない』

芦原さんが痛切に願った「漫画に忠実に」という約束は、いったい制作体制の中のどこで止められていたのか。芦原さんの実質的な代理人であった小学館の中か? 日本テレビ内か? それとも制作チーム内か? はたまた出版社とテレビ局の間に「なあなあ」にする暗黙の了解があったのか。日本テレビは契約書が存在しなかったとしながらも、「脚本そのものは芦原さんの許諾を得ており問題ない」と主張する。

日本テレビ本社
撮影=プレジデントオンライン編集部
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制作現場には原作者や脚本家をケアする人がいなかったのか

ドラマ9話・10話では脚本家が自身の台本が使われなかったことについてSNSに不満を投稿していた。これを芦原さんご本人が目にしていた可能性も十分にある。これが問題の主要因だというつもりは全くないが、チームでの仕事において、いびつな形で不満が噴出するのは健全ではない。こういった点をケアする人間が制作チームにいなかったことも問題の一つだろう。同局の福田専務は「(ドラマは)枠も増えている。本案件についてコミュニケーション不足、人員不足だったのでは、ということは想像できる」とも話す。

日本テレビは「ドラマ制作部門から独立した社内特別調査チームを設置する」と発表しており、著作権に通じた早稲田祐美子弁護士や、コンテンツ制作の契約法務に詳しい国松崇弁護士を外部から招く予定だ。しかし第三者委員会ではなく社内調査にとどめるこの対応は、不十分なのではという指摘もある。

※日本テレビ プレスリリース「ドラマ『セクシー田中さん』について