小津安二郎が「お酒を飲みながら脚本を書いた」理由
「小津調」と称される独特の映像世界で優れた作品を次々に生み出し、世界的にも高い評価を得ている映画監督で脚本家でもある小津安二郎は、山小屋にこもり、同じく映画脚本家の野田高梧と連日お酒を飲みながら脚本を書いていたそうです。
空いた一升瓶に1、2と数字を書いていき、それが60、70になったときに、やっと1本の映画の脚本ができたというエピソードがあります。
「お酒を飲みながら脚本を書くとは何事か!」と思う人もいるでしょう。ですが、これが数々の名作を生み出した小津流の脳の休ませ方だったのかもしれません。
ではなぜ、多くの一流クリエイターがまるで夏休みの小学生のように、脳を休めることに重きを置いているのでしょうか。
それは、「脳の疲労を溜めこまない」ということが必要であることを、普段の仕事から本能的に感じているからに他なりません。
特に、集中的に仕事を続けているときというのは、脳の疲労が溜まりやすいといえます。
「身体が特別に疲れているわけではないのに、なぜか頭が働かない……」
このような経験は、おそらく誰もがしているのではないでしょうか。
そんなときには、根性論だけではなかなかうまくいかないので、しっかりとした戦略を立てながら、自分なりの疲労回復法を考えることも、重要な仕事のテクニックとなるのです。
「やることは多いのに、どうもやる気が出ない」
「いつもイライラしてしまう」
「疲れて眠いはずなのに眠れない」
「目の疲れやひどい肩こりや腰痛を抱えている」
これらはまさに、「脳が疲労している」サインだといえるでしょう。
脳が疲れているときというのは、精神的なストレスや外部からの情報を詰め込みすぎてしまって脳が正常な機能を果たせていない状態になっているときです。
そんな脳が疲れ切った状態であることを知らずに、「もう少しだけ頑張っておこう」などと無理を重ねれば、脳の疲労はどんどん蓄積していってしまいます。
脳の疲労ではなく、退屈している可能性も
また、「脳が疲れている」ということには、ちょっとした罠が仕掛けられているのです。
それは、身体の疲れのような全身に感じる疲労感や筋肉痛などといった実感のある疲労ではないため、ほとんどの人は、今、自分の脳が疲労しているかどうかを、判別することができないということです。
特に、毎日のように忙しく働いているビジネスパーソンは要注意です。ここで一度、日々の行動を振り返ってみてください。
「自分さえ我慢すれば仕事がうまくまわる」
「結果を出すためには、ある程度の無理は仕方ない」
そう考えて、自分の脳の疲労を見過ごしてしまっている可能性があります。
脳を休ませるためには、こうした脳の疲労の見過ごしや、自分自身との対話不足を解消するところからスタートしなければなりません。
また、脳の疲労については、脳科学の見地からは、別の理由も見え隠れします。
それは、脳が疲労を感じていると思っていても、実はずっと同じことに没入して脳が退屈しているだけかもしれないということです。
だとすれば、その退屈をなくしさえすれば、脳が疲労を感じることもないということになります。
同じことを長時間やっていることが原因で脳が退屈しているのであれば、一度今やっている仕事の流れを変えて、まったく違うことをやれば脳は再び高いパフォーマンスを発揮することができるというわけです。
そのような意識づけによって、脳が疲労を感じるのを抑制していくことができるようになっていきます。