万引きで摘発される「ボーダーライン」

法律上は、たとえはじめての万引きや少額の万引きであっても摘発される可能性はあり、明確なボーダーラインというものは存在しません。

それを踏まえたうえで、これまでセルフコーヒー万引きで摘発された報道から摘発される傾向を検討すると、繰り返し犯行に及んでおり、コンビニ側や警察側からマークされていた場合が多いようです。

これは、単純にボタンを押し間違えてしまった人を誤って摘発しないようにすると同時に、常習犯が「ボタンを押し間違えてしまった」と弁解しても裁判などで認められにくくするためだと思われます。

写真=iStock.com/Andrey Rykov
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少額の万引きでも重い処罰を受ける可能性がある

冒頭のニュースを耳にした方の中には、逮捕や免職処分は行き過ぎと感じた方もいるかもしれません。

たしかに、逮捕するには逃亡や罪証隠滅のおそれなどの「逮捕の必要性」が要件になります。また、公務員の懲戒処分については、主に免職、停職、減給、戒告の4種類があり、処分は行為の重さに見合ったものでなければなりません。その点からすれば、逮捕や免職処分は行き過ぎであるといえるケースもあるかとは思います。

岡野武志『おとな六法』(クロスメディア・パブリッシング)

それでも、たとえ少額の万引きであっても重い処罰を受ける可能性があるということは、しっかりと認識しておいた方がよいでしょう。

実際に、前科があったケースではありますが、10円硬貨1枚を盗んださい銭盗の事案で懲役1年の実刑判決が言い渡されている裁判例も存在します(大阪高判平成24年12月20日)。また、セルフコーヒーの量増しを指摘されて車で逃げた犯人が、追いかけてきたコンビニの店長にケガをさせたとして強盗殺人未遂で逮捕された事件もありました。

つい出来心を抱きそうになることがあるかもしれませんが、その出来心がその後の人生を大きく変えてしまうかもしれないということをしっかりと覚えておきましょう。

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