新NISAを活用する人、しない人の間で格差は広がる

【パックン】「政治と金の問題」のように、政治家に声を一番聞いてもらえるのは政治資金パーティーに参加できるような人たちですよね。町工場で働いている人、シングルマザー、パートの方はパーティーには行っていない。だから僕はこの政治と金の問題が格差問題と直結しているようにも見えるんです。

そして、ちょっと言いづらいけど新NISAも格差社会の表れで格差社会を助長するものかもしれない。新NISAではキャピタルゲインに対する2割の税金が免除になります。これも投資できる人だけを優遇するものだが、そもそも2割という税率自体もお得なのです。普通の人が頑張って働く場合、所得が増えると税率も上がっていく仕組みになっています。課税される所得が330万円に達するとその時点で税率20%になり、最高で45%まで上がってしまいます。必死に仕事して稼ぐと納税額がぐんぐん増えるのに、大して頑張らないで手に入ってしまうキャピタルゲインがどんな大金になっても一律2割の税金しか納めないなんてどういうことだと思うんですよ。まあ、アメリカもそうなっているから、日本も合わせているだけかもしれないけど。

【エミン】キャピタルゲイン課税は日本より高いところもあれば、低いところもあるけど、20%の税率に関しては、そこまで気にする必要はないと僕は思っている。

ポイントは、すでに資産を持っている人といない人との差。とくに不動産を持っている人は、資産価値が相当に上がっているから、持っていない人の差は大きくなっている。同じことがアメリカでも起きています。原因は金融緩和のやり過ぎ。金融緩和は資産インフレをつくります。

撮影=遠藤素子
「日銀が金融緩和を続けていることで、資産を持つ人と持たない人の格差は拡大している」とエミンさん。

ベビーボンドなどで若い層に公的資金を使うべき

【パックン】不動産だけを見ても格差は見えるね。都市部は跳ね上がっているけど、過疎化している地域で何代も資産として持ち続けた不動産は、お金を支払って政府に返還しなければいけない状態になっているでしょ。そこにも勝ち負けができています。国民の実感にこれほど差が出てくると、エミンさんがおっしゃったように社会的な不安定にもつながりかねないと思う。“都市部の人だけが得してどうするんだ”って。

――負け組から抜け出すには、少しでも積立投資をして資産をつくるのがいいですか。

【パックン】負け組という言い方はあまりすきじゃないですけど、とくに年金が心配な今の時代は、自分で自分の老後資金を形成しなければなりません。

そのためには積み立てを始めることも大事ですが、僕はまだ資産を持っていない層に対して、少し公的資金をかけていいと思うんです、ベビーボンドのように。トルコにもある?

【エミン】ベビーボンドって何?

【パックン】赤ちゃんに信託口座を渡して、いくらかのお金を政府が最初に入れておくんです。

【エミン】へえ、すごい。

【パックン】導入している国や地域は少ないですけど。

【エミン】トルコにはないよ。トルコは赤ちゃんの服に金(ゴールド)のコインを付ける(笑)。

【パックン】本物の金?

【エミン】そう。本物。