わずか一打差で◯か×に分けられる世界

「プロテストという制度は、評価の基準がひとつしかないんです。通るか通らないか。通ればその人は◯(マル)、落ちれば、その人は×(バツ)がつく。わずか一打の差であっても、合格した人と選手として不合格の選手に分けられてしまう」と和田は言う。

プロテストに挑戦した女子選手たちは、合格ラインを境に全く異なった評価を受ける。◯(マル)になれば、ツアープロとして新しい人生を歩むことが出来る。しかし、×(バツ)になれば、競技者として不合格の烙印らくいんを押され、それまでの努力も意味をなさないと見做されがちだ。

選手として不合格にならない方法は、自らを奮い起こして次の年にまた挑戦することだ。だから多くの選手たちは諦めず、プロゴルファーではなくアマチュアでもないという微妙な立場にいながら、挑戦を続けている。競技者として、本当に×(バツ)がつくのは、その挑戦をやめたときだからだ。

プロテストに合格しないまま、レギュラーツアーに参戦

笹原優美は高校時代から和田の指導を受けていた、いわば愛弟子だ。1992年生まれで、2023年で11回目のプロテストを受け、残念ながら2次予選で涙をのんだ。高校卒業後の2011年に初めてのプロテストを受けてから、11度プロテストに挑戦し、すべて敗退しているのである。

しかし、プロテストの結果を見て、笹原が実力に乏しい選手だと断じてしまうのは早計だろう。2013年~15年はプロテスト最終予選まで進出しており、15年は通過ラインまで2打差と迫っている。過去6度最終予選まで進出しており、合格まであと一歩のところに迫っているのだ。

また、2016~17年の2年間はテストを受験せず、TPD単年登録制度を活用して、JLPGAのレギュラーツアーや2部にあたるステップ・アップ・ツアーに参戦していた。

TPD単年登録とは、プロテストに合格していない選手でも実力があればツアーに参戦できる制度だ。JLPGAツアーへの出場順は、QT(クォリファイングトーナメント)という予選会で決定する。QTで上位に入りさえすれば、TPD単年登録によってその一年をツアープロとして、JLPGAのトーナメントに参戦できる。

レギュラーツアーで21勝を挙げ、賞金女王にも2度輝いたイ・ボミも元々はTPD単年単年登録によって出場資格を得たプレーヤーだ。その他にもこの制度を利用して、ツアープレーヤーへの道を開いた選手は数多く存在する。

筆者撮影
和田泰朗氏が主宰するTWGTは、選手が1口2万円のサポーターを5人集めないと出場できないというユニークな形式を取っている