規制法を妨害してきた“猛烈なロビー活動”
FBIのデトロイト事務所の捜査官はこの事件の後、捜査を開始し、3人がナイジェリア最大都市のラゴスを拠点として、オンラインで数百人と交流していたことを突き止めたという。
FBIによれば、セクストーション事件は増加傾向にあり、世界中で詐欺師(加害者)たちが未成年者を性的に搾取しようと狙っているという。それはつまり、日本の子どもや若者も標的にされる可能性があるということである。
このように未成年者のSNS被害は想像を絶するようなひどい状況となり、自ら命を絶つ子どもが増え、親たちは悲しみに暮れている。にもかかわらず、連邦政府は効果的な対策をなかなか打ち出せないのは、大手ハイテク企業が多額の資金をロビー活動に費やし、議会での法案成立を妨害・阻止してきたからである。
先日の公聴会で共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員は、「法案を可決できないのは、SNS企業が強大な力を持っているからです。私たちは長年審議を重ねてきましたが、SNS企業が弁護士やロビイストを雇い入れ、法案の通過を妨害してきたのです」と述べたが、まさにその通りである。公聴会で集中砲火を受けたメタは、2022年に1915万ドル(約27億円)、翌2023年には前期だけで991万ドル(約14億円)を米国でのロビー活動に使ったことが調査でわかっている。
また、TikTokは2019年から2023年までに米国政府へのロビー活動に1300万ドル(約18億円)を費やしたと報道されている。
法案成立への期待が高まっているワケ
SNS企業は「ネットチョイス」や「コンピューター通信産業協会(CCIA)」など有力なハイテク業界団体への資金提供を通して、議会での法案成立を阻止しようという巧みなロビー活動を展開している。
これらの団体のロビイストたちは「規制は憲法で保障された言論の自由を侵害するおそれがある」「子どもたちのオンライン能力の向上に悪影響を及ぼす可能性がある」「企業の自主的な取り組みを妨げる可能性がある」などと声高に反対し、議員たちに法案に反対する(賛成しない)ように働きかけているのである。
SNS企業による激しいロビー活動はおさまる気配はないが、それでも今回は法案成立への期待が高まっている。
理由はいくつかある。1つは公聴会で証言した5人のCEOのうち、XとスナップのCEOが「有害なコンテンツに対する企業の責任をより厳しく問う超党派の法案を支持する」と述べたことである。規制反対で一致協力していたように見えたSNS企業にも少し変化が出てきたようだ。
超党派の法案とは、民主党のリチャード・ブルメンソール上院議員と共和党のブラックバーン上院議員によって共同提出された「子どもオンライン安全法(KOSA)」だが、これはネットいじめや性的搾取などのリスクを軽減するためにプラットフォームに注意義務を課し、安全対策を義務付ける内容になっている。
2月15日現在、KOSAは上院(定数100人)で60人以上の支持を得ており、可決される可能性は高い。問題は下院でどうなるかだが、これまでの状況を見る限り、下院でも可決される可能性は十分にあるとみられる。