「両親からの評価」を気にし過ぎた元カレ

私の基準では彼は100点だった。私に愛をささやくときにどんな目をするか、眠っているときに名前を呼ぶと返事をするのがどれだけかわいいか、運転中にスピードバンプを越えるとき、驚かせないように前もって私の腕を押さえる癖、私が怒ってそっぽを向いてしまったときにその怒りを刺激することなく鎮めるスキルみたいなもの。それは、私の両親には知る由もないことだった。

だから、あの日の彼の姿に両親がつれない評価をしたとしてもすでに彼には私の心をつかんで離さない力があったのに、彼にしてみれば、私みたいにのんきではいられなかったのだろう。

両親の評価によって私から稼いだ甘い点数が減らされてしまうほど両親が私にとって大事な存在だったらどうしようとひやひやしただろうし、その不安が、彼がこれまで経験した「目上の人たちの評価基準」を思い起こさせ、窮屈で無理な行動に耐えさせたのかもしれない。

写真=iStock.com/Olivier Le Moal
※写真はイメージです

「よく見せること」が目的になっている

その次の彼氏も両親に会ったことがあるが、私はその場のすべてが居心地悪かった。何より、彼氏が両親に悪い印象を与えないようにおどおどしているのが気に障った。私が知っている自信にあふれた自然体の彼の魅力が消えてしまうのが我慢ならなかった。それは両親に対しても同じだった。

ふだんと違って気を使い、話しぶりを変え、箸を置く手つきまでよそいきな感じなのが気に入らなかった。私が双方を気まずい状況に置いてしまった気がした。私が両親を愛する理由と彼氏を愛する理由をそれぞれにきちんと教えてあげられないまま、「よく見せること」に成功することが目的の場所に私の愛する人たちを集合させたのは利己的に思えた。

それ以来、私は彼氏と両親を会わせていない。写真を見せたり、どんな人かを教えたりはしたけれど、対面の場を設けることはしなかった。

そうして何年かが過ぎ、私はいわゆる結婚適齢期に突入した。そのころ、私はKと恋愛中だった。Kは私が非婚主義者だということをつき合う前から知っていて、彼が私の考えを十分に尊重してくれていることが恋愛をはじめるのに功を奏した。

もしKが結婚願望のある人なら、彼の時間とエネルギーを無駄遣いしたくなかったので、私たちはつき合う前にこれについて何度も話をした。当時私は化粧品のサンプルをたくさんもらう仕事をしていて、もらったサンプルのうち使わないものを彼にあげたことがある。

彼は一緒に働いている後輩との関係がうまくいっていないことを悩んでいて、その後輩はお化粧が好きみたいだと言うので、これでも渡して、「僕の彼女が仕事でもらったって言うから、ちょっと分けてもらったんだ」って声をかけてみたらと言いながら。