投機目的で販売された分譲地は全国各地にあるが、僕が知る限り、複数の草刈り業者が群雄割拠し、それがひとつの地場産業として成立しているのは少なくとも千葉県の郊外だけだ。
だが、言葉は悪いが、決して生産的とは言えないこの「草刈りビジネス」は、果たしていつまで続くものだろうか。分譲地の数は膨大であるし、率直に言って初期投資もそれほどかからない労働集約型の事業なので、近年中にすぐさま消滅するようなビジネスだとは思わない。だが、今日はもはや新規の「投機型」分譲地が開発されるような時世ではない。
多くの分譲地の購入者が高齢となり、所有者の世代交代が進む中、限られた顧客を巡って仕事を取り合う、所謂「レッドオーシャン」のような事態にならないだろうか。
仲介する意欲を見せない業者もあるとはいえ、間違いなく千葉県の限界分譲地の市場は、草刈り業者がその一翼を担っているし、膨大な数の管理地を請け負っているからこその効率性もある。今も住民が暮らす限界分譲地の環境維持は、こうした草刈り業者のビジネスに頼るところが大きい。
管理放棄地はこれからも増え続ける
現在僕が暮らしている横芝光町の分譲地を初めて訪問したのは2018年の夏だったが、それから5年以上が経過し、僕が確認しているだけでも5区画が、いつの間にか草刈り業者が入らなくなり、管理が放棄されてしまった。
業者に頼まなくなった理由については各所有者に伺わない限りその理由を知ることはできないが、おそらく、売れる見込みもないまま管理を続けることの不毛さに辟易してしまったのではないだろうか。あるいは相続のタイミングで、相続人の判断で管理契約が打ち切られている可能性もある。
取材で訪れた別の分譲地でも、今は全く管理されなくなり荒れ果てた放棄区画の藪の中に、以前は依頼していたであろう業者の看板が埋もれている光景を見ることは珍しくない。
Googleマップのストリートビューでも、古い撮影画像と見比べると、徐々に管理放棄地が増加している模様が見て取れる。だが、管理放棄は特定のエリアに集中しているわけではなく、ほとんど人目につかないような、各地の寂れた分譲地の中で散発的に発生しているので、地元住民でさえ、その管理放棄の増加の模様を実感する機会は少ないかもしれない。