孤独を抱えた高齢者たちの暗い欲望
自宅の駐車場に現れた健一郎に、女性が
「これ以上、付きまとうようなら警察を呼びます!」
と警告すると、健一郎はその日は大人しく帰った。ところが翌日、女性が自宅の鍵を開けようとしたところ、女性は背後から健一郎に抱き着かれ、すぐさま警察を呼ぶことになったのである。
弁護人の話によれば、健一郎は妻を亡くした後、孤独な日々を送っており、話し相手は被害女性だけだったという。かつて経験したことのない、孤独な日々を埋め合わせるよう女性に依存していき、逮捕されてようやく目が覚めたと反省しているという。
一方、娘の奈津美は、そんな父親の孤独に全く気が付いていなかった。
「父は強い人で、寂しい思いをしているなんて、恥ずかしくて私たちには言えなかったでしょう……。これからは、もっとそばにいてあげようと思いました」
不起訴処分で釈放された健一郎は、知人の紹介で再び仕事を始め、多忙な日々を取り戻した。
誰しも家族には見せない一面がある。それが性犯罪として現れた時、家族が受ける衝撃と屈辱は計り知れない。高齢者の性は半ばタブー視されているが、高齢者同士の恋愛や再婚が進むなか、こうしたトラブルも想定される。高齢化の一途を辿る社会において、直視せざるをえない問題となろう。