保全協力金と合わせて3000円がかかる計算に

地方自治法を所管する総務省では、今回のゲートだけという公の施設は、全国的にも初めてのケースとなるだけに、「慎重に調べている」と口を濁す。

果たして、道路上のゲートが住民の福祉を増進する「公の施設」なのかという疑問も生じるが、富士山保全の趣旨から言えば、頭から否定はできないのだろう。

いずれにしても山梨県議会で慎重に審議される。

ゲート設置で、午後4時から翌日午前3時まで山小屋宿泊者以外は通行できなくなる。また1日当たりの登山者は4000人を上限とする入山規制を行う予定である。

当然、「通行料」徴収などの管理業務は、民間業者へ委託することになる。

麓から約2000メートルの地点までの往復、24時間徴収を行う厳しい業務だから、交代制となり、管理業者費用も大きな負担となる。

だから、ゲート設置で、長崎知事は「ソフト」面で多額の費用が必要となると強調したことも理解できる。

現在、静岡、山梨の両県で実施している任意の富士山保全協力金も、今回設置される「ゲート」で同時に支払いを要請することになる。

保全協力金は1000円だが、吉田口ルートではゲートで徴収することになるから、富士登山をする場合、山梨県側の登山客のほとんどが3000円を支払うことになるだろう。

筆者撮影
静岡県の保全協力金に応じた登山者ら(富士山5合目富士宮口)

なぜ静岡県は入山規制に着手できないのか

山梨県議会で可決されれば、昨シーズン(7月1日~9月10日)、吉田口ルートから約15万人が富士登山をしたから、通行料金は約3億円の収入が見込まれる。

保全協力金を合わせれば、4億5000万円程度の収入が見込まれる。

吉田口ルートには、20軒程度の山小屋が点在する。

山小屋関係者からは「高すぎる」との声も上がり、長崎知事は2月1日の時点で、「使用料は2000円で調整している」と述べている。

15日に提案される条例案で金額などが明らかにされる。

富士山北側の山梨県の長崎知事が、富士山の「入山料」徴収、人数制限などの入山規制を行うことができるのに、南側の静岡県の川勝知事は入山規制には消極的である。

そのいちばんの大きな理由は、富士山麓がもともとは天皇家の財産だったという特殊事情がある。