リニアでは「環境保全」を叫ぶ川勝知事が沈黙している
川勝平太知事は、リニアトンネル問題で、ユネスコエコパークの「南アルプス」保全は国際的な公約であるとして、JR東海に厳しい姿勢で、環境問題への対応でさまざまな難くせをつけ、静岡工区の着工を認めていない。
ところが、エコパークよりも、一段と厳しい世界遺産レベルの環境保全を求められる「富士山保全」には沈黙している。
今回の富士山の入山規制で、長崎知事に一歩も二歩も、後れを取ることになった。人一倍、負けん気の強い川勝知事だが、リニア妨害のあの手この手と違い、何もできずに切歯扼腕するのが精いっぱいである。
ただ、今回の山梨県の取り組む入山規制には複雑な事情がある。
いったい、どんな入山規制なのか?
吉田口からの登山道は「山梨県道」
まず吉田口登山道について説明する。
山梨県富士吉田市からの有料道路「富士スバルライン」は富士山5合目ロータリーで終点となる。大型駐車場、土産物店、レストランなどが軒を連ねる5合目付近から県道702号線の登山道が始まり、富士頂上まで県道の登山道が続いている。
今回の入山規制が複雑なのは、その手続きにある。
5合目ロータリーから泉ヶ滝までの約900mの区間(幅員は6mから24m)を道路法の適用から除外する措置を行ったのだ。
登山道の歩行者には「通行の自由」があるため、これまでの道路にゲートなどを設けることはできない。歩行者に、この区間だけを有料道路とする根拠もない。
このため、山梨県は2月1日に道路法の適用解除を公示した。つまり、法律上は道路ではなくなったのだ(図表1)。
このあと、道路ではなくなった区間を「県有施設」とする手続きが始まる。
県有施設にゲートを設けて、県道路管理課ではなく、県観光文化・スポーツ部世界遺産課が管理することになる。
県有施設に設置したゲートで2000円を徴収、時間規制や人数制限の入山規制を行う予定である。
道路法上の道路ではなくなり、たとえ県有施設であっても、実態は単なる道路に変わりない。だから、ゲートを抜けて、泉ヶ滝からは再び、無料の道路となり、頂上へ続く。