なんの前触れもなく突然サンマの生息分布が変わった

今回の協議では、漁獲枠のほか、「東経170度以東における6~7月の漁獲禁止」が初めて合意に達した。東経170度はニュージーランドが位置するあたりの経度であり、北太平洋のこの海域には、生まれたばかりの0歳魚、つまり翌年以降、漁獲対象になり得るサンマが多いのだという。

漁船に追い回される心配がないのだから、「少しでも仲間を増やして来年はぜひ、日本の近くまでいらっしゃい」と願うばかりだが、資源量が激減している今、遠い東の沖合に分散しているサンマたちが、日本に回遊してきて、かつてのような豊漁になる状況ではないだろう。

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では、サンマは近年、なぜ歴史的な不漁に見舞われているのだろうか。理由は決して単純ではない。

サンマ資源の調査・研究をしている国立研究開発法人水産研究・教育機構によると、まず不漁の契機となったのは、「2010年に突然起きた分布の沖合化」だった(研究機関が「突然」と表現しているだけに、少なくとも目立った前兆はなかったようだ)。サンマの生息分布が日本沿岸ではなく、太平洋の遠い沖合に移り、それまで秋にみられた日本近海での南下が見られなくなったという。

1年で約10万トン減ったサンマ、同時期から増えたマイワシ

2010年以降についても、「海洋環境の変化や餌環境の変化、他の浮魚類の出現などにより、サンマ回遊の沖合化と資源の減少が継続・進行している」(同機構)と分析されている。

確かに、日本のサンマ漁獲量は、2009年に31万トンを超えていたが、2010年には約20万7000トンと急降下した。その後、30万トンレベルの年はなく、現在では、数万トンレベルに落ち続けている。

同機構の指摘のなかに、「他の浮魚類の出現」とあるが、これはマイワシとサバ類を指す。サンマやマイワシ、サバ類などの多獲性魚(一度に大量に獲れる魚)は、深海ではなく主に海面の表層に生息する浮き魚に分類される。回遊ルートはまったく同じではないものの、特に日本の近海に餌を求めてやってくれば、競合してしまうのだという。

こちらも相関がはっきりとしている。マイワシの方は2009年から増加傾向を示し、2011年には漁獲量が急増しているため、勢力が拡大している様子がうかがえる。サバ類については、2010年に49万トン以上の豊漁となり絶好調だった。つまり、サンマ資源の減少と入れ替わるように資源量を増やしていたのだ。

かと言って、サンマ資源を増やすためにマイワシ、サバ類をたくさん獲ろうというのは現実的でない。棒受け網漁を主体としたサンマ漁業と、巻き網漁などのマイワシ、サバ漁業は、それぞれの対象資源の評価の下で管理されており、他の魚を増やすために特定の魚を余計に獲ることなどあり得ない。そもそもマイワシ、サバ類には漁獲可能量が設定されていて、枠内での操業が行われているのだ。