ほとんど獲っていないEEZに枠の大半が割かれている

しかも、日本の漁獲枠約11万8000トンのうち、近年の漁獲の大半を占めている公海の枠は約2万1000トンと少なく、残りの約10万トンは日本とロシア双方の排他的経済水域(EEZ)内に設定された。昨年、全体のわずか数パーセントしか両国のEEZ内で漁獲されなかったにもかかわらず、何故か大量の枠が認められている。「獲れる可能性はほとんどないが、仮にEEZ内にサンマが入ってくれば、獲ってもよい」という甘い管理策だ。

いったいなぜ、こうした上限設定が国際会議でまかり通るのか。

日本や中国、ロシア、韓国、台湾など、9カ国・地域が加盟するNPFCは、2015年に設立された新しい国際資源管理機関だ。今回、協議の焦点となったのは漁獲の大半を占める“公海での総漁獲枠”であり、2022年の19.8万トンから24%削減して15万トンとした。前述のとおり、近年はサンマの分布はほとんどが公海で、日本とロシアの200カイリ内の漁獲は、わずかな量にとどまっている。

獲れるはずのないEEZ内の漁獲枠を含め、「実際の漁獲量の数倍もの総漁獲枠が設定されるのはおかしい」といった疑問の声が、漁業・魚市場関係者の間で広がった。他にも漁業者からは、「日本でサンマ漁が始まる前の5月ごろから、外国漁船が公海で先獲りするのを禁止すべきだ」といった声が上がっていたが、NPFCではスルーされている。

日本のサンマ漁が活発化する前の時期に外国漁船が獲りまくる

1990年以降、ロシアに加えて台湾や韓国がサンマ漁に加わり、2000年以降になると、外国漁船の台頭がより顕著になった。日本漁船の操業が活発化する秋を待たずに、5月ごろから超大型漁船によって、遠い公海上でサンマをごっそり獲りまくる中国、台湾漁船などが目立っていたが、そうした先獲りへの規制は聞き入れられなかったのだ。

その結果、近年は日本のサンマ漁獲のシェアがごく一部になっている。ただ、不漁を嘆くのは日本だけではない。わずかな量しか獲れず、小さくスリムなサンマばかりで物足りないのは、中国や台湾も同じであろう。

NPFCの漁獲枠設定や操業ルールの甘さに関し、漁業・魚市場関係者から疑問の声が高まるなか、「サンマ漁を1、2年控えたらどうか」と一時的な禁漁が必要だとする声も出ている。サンマの寿命は2年ほど。つまり、獲れるのはその年か前の年に生まれたサンマで、資源を回復させるためには少しでも親魚を守って、次の代のサンマを増やすことが必要だ。そこで、豊洲市場の競り人からは「甘い漁獲枠を設定するくらいなら、ちょっとサンマ漁を我慢して、かつてのようにたくさんサンマが獲れるようにした方が良いのではないか」といった声も上がっている。