サンマが深刻な不漁にあえいでいる。いったい何が起きているのか。時事通信社水産部の川本大吾部長は「2000年以降、日本のサンマ漁が活発化する秋より先に外国漁船が公海上でサンマをごっそり獲ってしまうようになった。国際資源管理機関である北太平洋漁業委員会に規制を訴えているが、聞き入れられていない」という――。
※本稿は、川本大吾『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文春新書)の一部を再編集したものです。
「サンマ漁獲枠25%減」も資源保護への実効性は疑問
2023年3月下旬、サンマに関するニュースが報じられた。
新聞各紙の見出しは、時事通信社も含め「サンマ漁獲枠、25%削減」だった。札幌市で開催された北太平洋漁業委員会(NPFC)の年次会合で、漁業国の2023、2024年の総漁獲枠を2022年の33万3750トンから25万トンへ、4分の3の水準に減らすことが決まったという記事であった。
一見すると、深刻な不漁にあえぐサンマ資源に配慮した決定のように思える。
しかし、NPFCが決めた数字は、実際に漁獲されるサンマの量よりもはるかに多いのだ。2022年に各国が漁獲した合計数はおよそ10万トンにすぎない。にもかかわらず、2023年の総漁獲枠は25万トンと、獲り切れるはずのない上限が設定されている。
さらに、25万トンの枠のうち、日本のサンマ漁獲枠は前年(約15万5000トン)に比べ、24%減の約11万8000トンとなった。過去最少ではあるが、こちらも2022年の実際の漁獲量である約1万8000トンに比べれば、桁違いの数字だ。過去にもこのような余裕のある枠が設定されたことがあり、資源管理上、実効性ある漁獲制限の必要性を指摘する声は少なくない。