平安時代から続く「御鈴の儀」
四方拝に続いて行われるのが三殿での歳旦祭。
年始の祭典である歳旦祭は「小祭」という位置づけなので、天皇陛下のほかは現在「皇嗣」というお立場にある秋篠宮殿下だけしか参列されない。
天皇陛下がまず賢所の内陣に進まれて、御玉串をお持ちになり、両段再拝のご作法にて拝礼をされる。その後、「御鈴の儀」。
ご神体を納める内々陣に控える祭祀の女性奉仕者・内掌典が多数の鈴につながる太綱を引いて合計91回、鈴を鳴らす。涼やかな音色が神の声のように響くという。時間として10分ほど鳴り続け、その間、天皇陛下はひれ伏された姿勢のまま。
祭祀中でも最も神秘な時間だ。
この御鈴の儀があるのは三殿でも賢所だけ。御鈴の儀については、平安時代の大江匡房の『江家次第』や鎌倉時代の兼好法師の『徒然草』にも書かれていて、由緒の古さを知ることができる。
天皇陛下が賢所、皇霊殿、神殿の順番で拝礼を済まされた後、秋篠宮殿下がご拝礼。秋篠宮殿下は、黄丹袍という本来は皇太子がお召しになる装束で、祭祀に臨んでおられる。ただし「御鈴の儀」はない。
天皇陛下が無言のうちに身にまとっておられる“オーラ”は、心を澄まして人間を超えた何ものかに向き合う厳粛な体験を、いくども繰り返しておられる事実によるところが少なくないだろう。
ティアラを着けた愛子さまも
歳旦祭の後に行われるのが新年祝賀の儀だ。
これは古代の「朝賀」に由来する国家にとって最高のハレの年間行事といえる。
朝賀は元日に天皇が朝廷の正殿にお出ましになり、文武百官から祝賀を受ける行事だった。
大化2年(646年)に行われたことが『日本書紀』に見えているのが文献上、初めての例とされる。
新年祝賀の儀は皇居・宮殿において午前10時から行われる。この時、天皇陛下は燕尾服に「大勲位菊花章頸飾」という最高位の首飾り型の勲章を身につけておられる。
ロングドレス姿の女性皇族方は、これまでコロナ禍に配慮してティアラの着用を控えてこられたが、今年は4年ぶりに着用された。
コロナ禍のさなかに成年を迎えられた天皇・皇后両陛下のご長女、敬宮(愛子内親王)殿下が正月行事でティアラを着けられたのは今年が初めて。
ただお一人だけ、ご自分用のものではなく、叔母にあたる黒田清子様からお借りしたティアラだ。しかし、これまで新調を控えてこられた奥ゆかしいお心遣いを思うと、借り物のティアラがより輝いて見えた国民も少なくなかったのではないだろうか。
この儀式では、天皇・皇后両陛下がまず正殿「松の間」で成年の皇族方から祝賀をお受けになる。