裸になった被害者にあった意外なモノ

ボッドフィッシュ殺害事件の捜査は、最初から最後まで頭を悩ませるものだった。

死体が遺体安置所に搬送されるまえに私は、服を切り落とす許可を検視局に求めた。通常は遺体をそのままの状態で搬送するのが決まりであり、それは異例の要求だった。しかし今回のケースでは死体の腐敗が進んでいたため、いわゆる「遺体袋効果」が起きるおそれがあった。どろどろとした雑多な液体が遺体袋に流れ込み、衣服についた血液の証拠が汚染されるのを防ぎたかった。

ポール・ホールズ 『異常殺人 科学捜査官が追い詰めたシリアルキラーたち』(新潮社)

O・J・シンプソン事件では、殺されたニコール・ブラウンの服の背中についた(犯人のものかもしれない)血液が、遺体袋内での出血のせいで証拠能力を失った。真犯人を確実に特定できた可能性のある血痕が、鑑定不能になってしまったということだ。今回は、そのような事態をどうしても避けたかった。

同僚たちが証拠を記録するためにカメラを構えてまわりで待機するなか、私は服を切りはじめた。切断作業は、多くの点において遺体解剖の手順と似たものだった。

病理医が体を切り開いて臓器を調べるように、両脚のズボンの前面、革のベルト、ワイシャツ、肌着を順に切り、服を開いた。それから一歩下がり、裸になった被害者の全身をたしかめた。「ちょっと待て」と私は言った。その体には膣にくわえ、乳房縮小手術か両乳房切除手術を施したような傷跡があった。

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