平日はサラリーマン、休日は寺院の「二刀流」

大手教団であっても、宗派の再編は避けられない。例えば、「山岳仏教」で知られる真言系や天台系は、山間部に立地する寺院が多い。また、浄土真宗系寺院は北陸や中国地方などに分布し、曹洞宗の一大拠点は東北である。

そうした人口減少傾向が強い地域に多くの寺を抱える宗派は、分派同士を吸収・合併していかざるを得なくなるだろう。

こうした厳しい現実に、仏教界は対処できずにいる。寺院消滅の流れに抗うことは難しい。だが、一縷の望みを託すならば、寺院同士が提携し、寺院の富を再配分することで助けられる地方寺院があるかもしれない。たとえば、都市型の裕福な寺院が、地方の寺院と提携することである。都会と地方の寺のメリットとデメリットをそれぞれ補完し合う仕組みづくりを急ぐべきだ。

たとえば、青森から東京へと移り住んだ檀家の場合。青森の菩提寺に墓を残しながら、東京の提携寺院に分骨する(その逆もあり)のだ。つまり、故郷の寺に先祖の遺骨を残したまま、故郷と縁を切らない仕組みをつくるのである。

そのことで、墓じまいするためのコストが抑えることができ、また、自分たちの暮らす東京で法事を営むことができる。そのうえで提携寺院に入る葬儀や法事の布施の一定額を、青森の菩提寺に配分する。菩提寺、提携寺院、檀家の三方にとってメリットがある。大事なのは、地方の寺院から離檀させない仕組みをつくることだ。

撮影=鵜飼秀徳
「イエの宗教」の象徴であった仏壇

この仕組みは、既に実証済みだ。東京都・四谷にある曹洞宗の東長寺が宮城や佐賀などの寺との「共同信徒」という形で取り入れて、効果をあげている。

他方、将来的には「兼業住職」の割合が増えていくだろう。檀家数の減少に比例して、寺院収入は減少する。布施の金額は地域の相場感によって違いがあるが、寺が専業で食べていける檀家数は少なくとも檀家200軒以上である。それ以下は住職が副業を持たないと、生活や後継者選びが厳しくなる。

足りなくなった寺院収入を補うためには、住職が兼業を余儀なくされる。つまり、平日は企業などで働き、休日は自坊で法務を行う「二刀流」だ。