「はい、みなさん、こんにちはー!」は緊張させるだけ

従来のヴォイストレーニングでは、いい声で話したり歌ったりするために、「もっと声を張り上げて」「もっと地声から上のほうまで引き上げて」などといわれます。

大きな声を張り上げて話すことは元気があっていいもの、高い声を力ずくで出して歌うことがかっこいいとされてきたからでしょう。

でも、それでは緊張した硬い声を相手にぶつけているだけ。

このように前に押し出した声は、専門用語で「フォワード・プロダクション」といって、聞く者に威圧感や恐怖を与えてしまいます。

営業マンの元気のいいプレゼンや売り込みでは買いたくなりませんし、セミナー講師の「はい、みなさん、こんにちはー!」みたいなカラ元気は、緊張させるだけなのです。

写真=iStock.com/Pekic
「はい、みなさん、こんにちはー!」は緊張させるだけ(※写真はイメージです)

お腹から声を出してはいけない

ヴォイストレーニングと聞くと、どんなトレーニングを想像しますか。

多くの人が想像するのが、「お腹から声を出す」とか、「あ、え、い、う、え、お、あ、お……」などの発声練習を想像するのではないでしょうか。

頑張ってお腹から声を出せば、大きな声は出せるでしょう。

でも、聞いている側からすると、そういう声って、何時間も聞いていられないものです。なぜか、「いい話なんだけど、聞いていると疲れる」声なのです。

私も「いい声を出すには腹筋を鍛え、腹から声を出す」と思い込み、頑張って腹筋を鍛えていた時期がありました。そのほうが高音も出せるし、声のボリュームも大きくなるし、声の勢いや声量で人を魅了する話し方がいいと思っていたのです。

でも、ある時期から、普通に話したり歌ったりすることができなくなってしまいました。それと同時に、プロとして話す仕事にも限界を感じてしまい、声の世界から遠ざかってしまったのです。声の世界に疲れてしまったのですね。

実は、声を出すにはお腹を意識したらダメなのです。意識するのは、軟口蓋(ソフトパレット)だけでOK。